ハローワークではシニア向け求人を公開している (撮影/多田敏男)
ハローワークではシニア向け求人を公開している (撮影/多田敏男)
高年齢求職者給付金の仕組みと計算方法 (週刊朝日2019年9月6日号より)
高年齢求職者給付金の仕組みと計算方法 (週刊朝日2019年9月6日号より)

 65歳からでももらえる失業保険があることをご存じだろうか。「高年齢求職者給付金」というが、シニアの雇用急増などを受けて、この失業保険、仕組みがパワーアップされたという。「長く働く」が一大テーマになるなか、うまく活用できればシニアの強い味方となる。知られざる失業保険をご紹介しよう。

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 都内のA男さん(68)は、この3年間で「失業保険」を3回受け取った。大手事務機器メーカーの出身。2015年3月まではそのメーカーの関連会社に勤めていた。

「大企業のサラリーマン一筋で来たので、常識知らずになっていると感じていました。税金など世の中の仕組みも知らなかったので、役所で働こうと思ったんです」

 たまたま広報紙で地元自治体が嘱託職員を募集しているのを知り、応募した。運よく採用され、国民健康保険を扱う職場で1年半、働いた。

「わけあって退職せざるを得なくなりました。辞めてハローワークへ行ったのですが、そこで初めて失業保険をもらったのです。合計約24万円でしたね」

 いろいろと仕事探しをしていたら、別の自治体から「臨時職員なら採用できる」と声がかかった。介護保険の係で書類のコピーや電話取りなど事務補助が仕事だった。3カ月ごとの契約更新で今度は1年3カ月働いた。そこを辞めてもらった失業保険は約14万円。

 また仕事探しを始めたら、同じ自治体の別のセクションから臨時職員の誘いがあった。同じく事務補助の仕事だが、今度は期間が決まっていた。10カ月間働き、3回目の失業保険は約9万円だった。もらったのは、この6月のことだ。

 A男さんは言う。

「現役から見ると10万~20万円は大した金額ではないでしょうが、第一線を退いた身には大金になります。それぞれ、ずいぶん助かりましたよ」

 A男さんがもらったのは、雇用保険の「高年齢求職者給付金」。65歳以上で働いている人が失業した場合、一定の条件を満たせばもらえる。

 この給付金、64歳までの失業保険(基本手当)と対比する形で、「65歳からの失業保険」といわれることが多い。

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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