「私が給付金をもらえたのは、ひとえに制度の存在やその改正を知っていたからです。現役時代は会社がすべて面倒を見てくれますが、いったん離れると誰も何も教えてくれませんよ」

 外部に頼れないとなると「自衛」するしかない。65歳以上で働く人は、失業保険の存在を知っておくべきなのだ。

 高年齢求職者給付金の概要、すなわち受給資格を得る条件と一時金の基準、金額を調べると現役社員らを対象にした基本手当より、受給資格が得られやすくなっていることがわかる。基本手当をもらうには、週20時間以上働くなど一定条件を満たし、過去2年間で12カ月間雇用保険に加入する必要があるのに対し、この給付金は過去1年間で6カ月間雇用保険に加入していれば済む。

 ただし、失業状態でないと給付金は出ない。「もうこれでリタイア」とか「辞めて骨休めしたい」はダメ。自己都合で会社を辞めた場合は、3カ月経たないと一時金が出ないという給付制限もある。

 一時金の基準はシンプルだ。加入期間が1年未満ならば「基本手当日額の30日分」、1年以上ならば「50日分」の二つだけだ。

 金額は賃金によって異なり、基本手当日額は次のようにして求める。

 まずは平均日給を意味する「賃金日額」を出す必要がある。表にある通り、離職直前の6カ月の賃金の合計額を出し、それを「180」で割って求める。

 毎月の賃金にあまり変動がなければ、月給を30で割っても概算額にはなる。求めた賃金日額に金額によって違う給付率をかければ基本手当日額(賃金日額の50~80%)が出る。それに30日、50日をかければ一時金の金額となるわけだ。

 ご覧の通り一時金の金額は、30日分で6万~約20万円、50日分で10万~約34万円となっている。

 確かに、条件を満たせばこの金額が何度でももらえるとなれば、「魅力的」だ。65歳を超えて失業状態になっても一定の金額を受け取れるなら、転職の機会も広がる。先の社労士の村上氏はこう言う。

次のページ