父が亡くなった時に火葬場で、その方は誰とも話さずに、一人静かにしていた。父が亡くなったと報告したあと、夜中に家に来てくれて、父に話しかけていた時、友が旅立ち、何を思っていたのだろうか。友がこの世を去った寂しさなのか。自分と重ね合わせたのか。

 今年、僕は肺の病気になり、「5年生存率30%の病気かも」と診断された時に、人生で初めて自分の命の限りを考えました。結果、「大丈夫」となり、今は安心していますが、あの数週間、仕事をしていても、何をしていても、自分が死ぬこと、残された家族のことをずっと考えていました。

 70歳を過ぎ、病気にかかり、友が病気で去っていった時に、何を思うのか?

 7月初旬、その父の親友が亡くなったと連絡を受けて、お線香を上げに行かせていただきました。顔を見せていただきました。偶然ですが、その日は街のお祭り。外では祭り囃子が聞こえていました。顔を見せていただいた時に、なぜだか、自分の父もいなくなったのだと、強く感じました。

 人は死ぬ。なかなか実感がわかないことですが、父がいなくなり、父の親友も旅立ち、お盆を迎える。こうやってゆっくり死ぬということを受け止め、死を学んでいくのだろう。

週刊朝日  2019年8月30日号

著者プロフィールを見る
鈴木おさむ

鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

鈴木おさむの記事一覧はこちら