シシリア アンチョビのピッザ パイ/昭和29年に創業した六本木「シシリア」の伝統の味をいまに受け継ぐ店。四角い「ピッザ パイ」(850円)は、メニュー名もレシピも本家創業当時のまま。発酵させたパイ生地を極薄くのばして具材をのせ、高温でパリッと焼き上げる。アンチョビ味はトマトソースとアンチョビにマリボーチーズがとろけて絶品。キュウリの下に甘酸っぱいドレッシングで和えたレタスが隠れる「グリーンサラダ」(650円)も人気の看板メニューだ。税別/東京都江戸川区西葛西6-12-7ミルメゾン2F-B(営)11:30~14:30L.O. 17:30~21:00L.O.(休)火・水 (撮影/写真部・小山幸佑)
シシリア アンチョビのピッザ パイ/昭和29年に創業した六本木「シシリア」の伝統の味をいまに受け継ぐ店。四角い「ピッザ パイ」(850円)は、メニュー名もレシピも本家創業当時のまま。発酵させたパイ生地を極薄くのばして具材をのせ、高温でパリッと焼き上げる。アンチョビ味はトマトソースとアンチョビにマリボーチーズがとろけて絶品。キュウリの下に甘酸っぱいドレッシングで和えたレタスが隠れる「グリーンサラダ」(650円)も人気の看板メニューだ。税別/東京都江戸川区西葛西6-12-7ミルメゾン2F-B(営)11:30~14:30L.O. 17:30~21:00L.O.(休)火・水 (撮影/写真部・小山幸佑)

 著名人がその人生において最も記憶に残る食を紹介する連載「人生の晩餐」。今回は、作家・山本一力さんの「シシリア」の「アンチョビのピッザ パイ」だ。

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 こちらのマスターは若い頃、六本木の老舗「シシリア」で働いた方。80歳を過ぎたいまも現役で、味を継いでいます。西葛西でこの店を見つけた時は嬉しかったですね。私の“ピザ事始め”は18の頃、六本木の店で始まったから。

 当時は旅行会社で働いていて、高校の同級生が麻布十番の4畳半ひと間の私のアパートに転がり込んできた。そいつが根っからの江戸っ子で。連れてってくれたのが六本木の「シシリア」だった。私はピザなんて食べたことがなくて、彼が「ピザは絶対にアンチョビに限る」って言い切るもんだから頼んでみたら、いやあ驚いた。生地が薄くてパリッパリで。あふれ出しそうなトマトソースにアンチョビの塩気が重なって。思わずお代わりしたのを覚えています。

 あの頃の懐かしい味がそのまんま、ここに行けば味わえる。丹念に仕込んだ生地で、あつあつのピザを出してくれます。マスターの人生の深みを感じるからこそ、なおさらうまい。これからも通い続けますよ。

(取材・文/沖村かなみ)

「シシリア」東京都江戸川区西葛西6-12-7 ミルメゾン2F-B/営業時間:11:30~14:30L.O.、17:30~21:00L.O./定休日:火・水

週刊朝日  2019年8月16日‐23日合併号