岩合光昭 (c)Iwago Photographic Office
岩合光昭 (c)Iwago Photographic Office
撮影/岩合光昭 (c)Iwago Photographic Office
撮影/岩合光昭 (c)Iwago Photographic Office

 動物写真家・岩合光昭さんが見つけた“いい(こ)”を紹介する「今週の猫」。今回は、京都府・祇園の「宵の口だ猫(にゃん)」です。

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 老舗の料亭の縁側で、若女将さんと子どもたちと猫が、線香花火を楽しんでいた。

 とはいえ、パチパチと弾ける火花に、ちょっと逃げ腰の白サバ猫。「私の隣にいれば大丈夫」とお姉ちゃんが抱き寄せた。

 もう一匹の三毛猫は我関せず、と離れ涼んでいる。その耳は隣家のお茶屋さんから流れてきた三味線の音(ね)の方を向いている。花街(かがい)の夜を告げる音(おと)。

 まだまだ宵の口。猫たちは華やかな祇園へパトロールに繰り出す前のひととき、大好きな家族と夏の夜を過ごす。

週刊朝日  2019年8月16日‐23日合併号

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岩合光昭

岩合光昭

岩合光昭(いわごう・みつあき)/1950年生まれ。動物写真家。1980年雑誌「アサヒグラフ」での連載「海からの手紙」で第5回木村伊兵衛写真賞を受賞。1982~84年アフリカ・タンザニアのセレンゲティ国立公園に滞在。このとき撮影した写真集『おきて』が全世界でベストセラーに。1986年ライオンの親子の写真が、米「ナショナルジオグラフィック」誌の表紙に。94年、スノーモンキーの写真で、日本人として唯一、2度目の表紙を飾る。2012年NHK BSプレミアムで「岩合光昭の世界ネコ歩き」のオンエア開始。著書に『日本のねこみち』『世界のねこみち』『岩合光昭写真集 猫にまた旅』『ふるさとのねこ』『ネコを撮る』『ネコへの恋文』など多数。初監督作品となる映画「ねことじいちゃん」のBlu-rayとDVDが発売中。

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