運営を任された不動産情報会社2社のサイトには、今年2月時点で延べ9千件が登録されている。バンクを通じてこれまでに約1900件の仲介が成立したという。

 空き家の解体費を援助したり、税負担を軽減したりする自治体もある。自治体の支援制度は、空き家バンクのサイトでも検索できるので調べてみよう。

 中古住宅の取引を促す民間サービスも充実している。中古住宅をリフォームして販売するカチタス(群馬県桐生市)は、地方の戸建てを中心に年5千件余りを扱う。

「古くて見た目が汚い物件でもあきらめないでください」(執行役員でマーケティング室長の大江治利さん)

 重要な部分が腐っていないなど一定の条件を満たせば買い取り、傷んだ内外装を修理して、「売れる物件」に仕立て直す。割安な戸建て住宅は消費者にも好評だ。

 こうしたサービスもあるとはいえ、どんな家でも買い取ってもらえるとは限らない。自治体への寄付も、不動産の価値が少ないと難しい。処分できない家は、相続放棄を選ぶこともできる。

 所有者が亡くなってから3カ月以内に、戸籍謄本などをそろえて家庭裁判所に申請する。自分で手続きすれば費用もほとんどかからない。誰も引き取り手のない家や土地は国のものになる。

 ただし、相続放棄すると、原則としてすべての資産を放棄することになる。現金だけ相続して実家は放棄といったことはできないので注意が必要だ。(本誌・池田正史)

週刊朝日  2019年8月16日号‐23日合併号

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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