長年暮らして思い出が詰まった家を、自分の代で手放すのは気が引けるだろう。しかし、空き家は維持するだけでも大きな負担。掃除や建物の修理などに手間や費用がかかるし、水道や電気、ガスなどの料金も取られる。固定資産税もあり、維持費が合計で年数十万円かかることも珍しくない。

 相続して3年後の年末を過ぎれば、国の「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」も受けられなくなる。特例では、空き家を売って得られた利益に課される所得税や住民税が、最高3千万円まで控除される。

 親族間で話し合いがまとまるまでに時間がかかると、シロアリやネズミなどの被害が広がったり、雑草が生い茂ったりする恐れもある。古くなった壁が崩れるなど、周りの住民に迷惑をかけると、持ち主は管理責任を問われる。

 結論を先延ばしにしていると、行政によって取り壊される可能性も出てくる。国は15年に空き家対策特別措置法を施行。危険な空き家を「特定空き家」に認定し、自治体が所有者に撤去などを指導、命令できるようにした。特定空き家に認定されると、固定資産税の住宅用地の特例から外される。撤去などの命令に違反すれば50万円以下の過料が科される。

 相続に詳しい弁護士の吉田修平さんはこう強調する。

「空き家など、引き継ぐと重荷になるような財産を、遺族の間で押し付け合う事態も想定されます。財産にどんな価値があるのか、短期間で把握するのは難しい。所有者しかわからない情報もあるので、元気なうちに準備するべきです」

 いざという時にどう処分するのか、お盆に集まったときに話し合おう。

 もし売却を考えるなら、焦って安く売らずに、複数の業者から見積もりを取る。不動産の評価は業者によって幅があるからだ。家具の処分や清掃などにかかる費用も考慮しておく。

 国や自治体も空き家を希望者に仲介する事業を強化している。その一つが「空き家バンク」。国交省が17年に開設したもので、ネットで物件情報を提供している。昨年4月には「全国版」を本格運用し始めた。

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