私は現在76歳だが、この高齢者でさえ、このような朝鮮半島の歴史を学校でまともに習ってこなかったのだから、私よりずっと若いテレビ報道界の人間が知らないのは当然である。

 われわれ日本人が、ここで思考を止めてはいけないと強く感じるのは、さらに現在の北朝鮮のミサイル問題の真相を知ろうとすれば、行き着くのが、この朝鮮半島の戦後史だからである。

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と韓国の文在寅大統領が、昨年4月から南北首脳会談を3度も開いて、いまだに両国のあいだで休戦協定さえ結んでいない1950年代の朝鮮戦争を完全に終わらせ、南北朝鮮が平和統一に向かっていこうとしている姿勢に対して、足を引っ張っているのが、日本の全テレビ報道界なのだ。若いので歴史を知らないからといって、許される態度ではない。だからこそ、ここまで、報道に従事する人間が必ず見ておくべき韓国映画の名作を紹介してきたのである。

 安倍晋三が、無条件で北朝鮮の金正恩委員長に首脳会談を求めても、北朝鮮がその申し出を一笑に付したのは当然である。北朝鮮で強制連行した労働被害者たちに対する巨額の賠償についても、日本は国交正常化の第一歩からやり直さなければならないというのに、「韓国の強制連行被害者に対して日本企業は賠償金を支払うな」と叫ぶような安倍晋三が、戦後処理の国交正常化交渉をしていない北朝鮮に対して、戦時中の大きな罪の償いに踏み切るはずがない。加えて、国連を通じて、声高に北朝鮮制裁を叫んできた人間が安倍晋三なのだから。

※週刊朝日オンライン限定記事

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広瀬隆

広瀬隆

広瀬隆(ひろせ・たかし)/1943年、東京生まれ。作家。早稲田大学理工学部卒。大手メーカーの技術者を経て執筆活動に入る。『東京に原発を!』『危険な話』『原子炉時限爆弾』『FUKUSHIMA 福島原発メルトダウン』『第二のフクシマ、日本滅亡』などで一貫して原子力発電の危険性を訴え続けている。『赤い楯―ロスチャイルドの謎』『二酸化炭素温暖化説の崩壊』『文明開化は長崎から』『カストロとゲバラ』など多分野にわたる著書多数。

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