博報堂「ソロもんLABO」のリーダー、荒川和久さん
博報堂「ソロもんLABO」のリーダー、荒川和久さん
孤独死を恐れない10カ条 (週刊朝日2019年8月2日号より)
孤独死を恐れない10カ条 (週刊朝日2019年8月2日号より)

「孤独死」と聞くと、どうしても悲惨なものと連想しがち。将来に不安を感じる人も多いだろう。だが、しっかりとした対策と心構えがあれば、過剰に怖がることはない。

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 一人暮らしの消費行動などを分析している博報堂「ソロもんLABO」のリーダー、荒川和久さんは、孤独死は恐れる必要はないと断言する。

結婚しているかどうかにかかわらず、話し相手となるパートナーや友人がいたり、ネットや趣味などを通じて誰かとすぐにつながれたりすると、一人でも充実した生活を送れます」

 独身で親とも同居していない単身世帯(ソロ)の調査からは、一人暮らしでも買い物などを楽しみ、自由を謳歌(おうか)する姿が見て取れるという。

 単身者向けの商品やサービスも拡大している。象徴的なのがコンビニだ。1食分ずつ袋詰めしたものや、すぐに食べられるサラダなど、バラエティーに富んだ「おひとりさま向け食品」が並ぶ。

「あまり知られてはいませんが、江戸時代の江戸の街は独身男性が圧倒的多数を占めるソロ社会でした。長い日本の歴史で見ると、『人はみな結婚し子どもを産み育てるもの』という考え方こそ異例です」(荒川さん)

 これから本格的に到来するソロ社会を乗り切るポイントは何か。荒川さんは「一人でも生きていく力」だと主張する。

「単身世帯が当たり前になるからといって、人と関わらずに生きていく社会になると考えるのは間違い。むしろ人とつながって、コミュニティーをつくっていく力が重要です」

 大事なのは、つながる先を一つに絞らないこと。妻や夫、子ども、勤務先など一つのものに依存していると、それがなくなったときの喪失感は大きく、孤立した状態に陥りやすい。

 価値観や考え方の異なる外部の人たちと、より多く出会う必要がある。外とのつながりが増えると、内面に「新しい自分」が芽生え、多様性を育てることができる。その結果、一人で生きていくのに必要な精神的な自立につながるという。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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