林:私、「月刊YOU」をずっと読んでたんですけど、急になくなっちゃっ
て、ほかのところにお引っ越ししたんですね。
萩尾:月刊「ココハナ」に引っ越して、去年7巻目が完成し、今年からまた8巻目の連載が始まります。
林:あれは人間関係がすごく複雑ですよね。私、子どものときから漫画を読むのがすごく速くて、パッパッパッとめくっていくんですけど、『王妃マルゴ』は本を読むぐらい時間がかかるんです。セリフの一つひとつを噛みしめながら、一コマ一コマ。あれは大叙事詩という感じですよ。
萩尾:ありがとうございます。ほめてください、あんまり売れてないので(笑)。
林:話が突然変わりますけど、萩尾先生、着物がお好きなんですよね。志村ふくみさんのお着物とか。
萩尾:はい、好きです。志村さんは草木染ですから、着物の前にベールがかかって、草木の精霊みたいなのがフワッとしてるようなオーラがあるんですよね、どの着物も。
林:志村ふくみさんの着物が好きって、さすがにシブいですね。漫画家の方って、忙しいからお金の使い道がなくて、パッと高価な着物をお買いになるそうですね。
萩尾:かもしれません(笑)。
林:失礼ですけど、萩尾先生はずっとお一人ですか。
萩尾:はい、一人で猫と一緒に暮らしております。猫は2階に2匹、1階に4匹住んでるんです。
林:実生活でもドラマみたいな恋多き生き方をしている池田理代子さんみたいな方と、萩尾先生みたいにお一人で猫ちゃんと暮らしている方と、漫画家でも2通りいらっしゃるんですね。あ、池田さんがめずらしいのかな。
萩尾:私が知ってる範疇では、女性漫画家って机に向かって黙々と仕事をしてる系が多いから、少女漫画家ではめずらしいタイプですよね。美人で博学で恋多き『王妃マルゴ』って、池田先生みたいな人かな? 今ふと思いました(笑)。
林:萩尾先生、スポーツはおやりにならないんですか。
萩尾:見るだけ。このあいだ、広島カープが最後の最後で9点入れられて負けて……。
林:カープファンなんですか。
萩尾:いや、彼がカープファンで。
林:彼というと、パートナーですか。
萩尾:いや、ただのお友達の彼。話がすごく合うので、「来世では結婚しようね」って言ってるんです。
林:ああ。一瞬、「えっ彼?」と思っちゃった。
萩尾:ウフフ。ちょっと見え張って、彼って言ってみました(笑)。
林:おかしい(笑)。萩尾先生ってこんなにおもしろい方だったとは。これからも作品、楽しみにしています。
(構成/本誌・松岡かすみ)
※週刊朝日 2019年7月26日号より抜粋