いいでしょう。こういう死を想像すると思わずにっこりしてしまいます。自分の死に対して暗いイメージを持つのはよくありません。明るいイメージを持てば、それが実現します。いわば、死のイメージトレーニングですね。

 さらに死に親しむために必要なのは、先にあの世に行ってしまった人たちと交流を深めることです。

 私の歳にもなると、多くの親しい人たちが向こうに行ってしまいました。ひとりでゆっくり杯を傾けていると、そういう人たちが語りかけてくるのです。

 肉親や先に逝ってしまった妻はもちろん、まだ飲みたりなかった友人たちがあらわれて、「早くこっちに来いよ、また大いに飲もう」と誘います。

 私が死んだら、真っ先に会いたいと思っている人が何人かいます。

 日本に太極拳を広めた楊名時先生もその一人です。楊名時先生と共に一杯やるのは至福のときでした。再びお会いできると思うと、死ぬのが楽しみになってくるのです。

 死をマイナスにとらえるのではなく、プラスにとらえましょう。そのためには死後の世界をどう考えるのかも重要になってきます。それについては、次号でお話ししたいと思います。

週刊朝日  2019年6月21日号

著者プロフィールを見る
帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

帯津良一の記事一覧はこちら