五十肩という病名は、俗称であり、正式には肩関節周囲炎や肩関節拘縮、凍結肩と呼ばれる。「凍結」したように、関節が固まって動かない点が、この病気の大きな特徴であり、その症状は急性期に続く慢性期以降に出現する。愛知医科大学病院整形外科の岩堀裕介医師は、次のように話す。

「慢性期になると、痛みは軽減しますが、そのまま放っておくと関節包の拘縮が進んでいきます。ひどい場合にはシャツの脇の下を縫い縮めたような状態になり、他の人が持ち上げても腕が動かなくなります。そうならないよう、痛みが軽くなってきたらリハビリで硬くなった肩関節をほぐす運動をして、少しずつ肩の可動域を回復させていきます」

 慢性期以降には、リハビリとともに、注射療法では、関節包や肩峰下滑液包の中にヒアルロン酸を注射して、肩の動きの改善をはかる。また、関節包内にステロイド薬と局所麻酔薬を注入して縮こまった関節包を膨らませたり、部分的に破裂させたりして、関節腔を拡張することもある。それでも改善しない場合は、エコー画像を見ながら神経根周囲に麻酔薬を注射して脱力させ、医師が外側から肩を動かすことで硬くなった関節包を破く、エコーガイド神経ブロック下徒手授動術をおこなうこともある。

 これらの治療によっても拘縮が改善されず、重症化して著しく日常生活に支障が及ぶ場合には、関節包の周囲をぐるりと切り離す手術が検討される。全身麻酔下で、肩に数カ所の穴を開けておこなう鏡視下関節包切離手術がおこなわれる。

 ただし、手術をした場合も術後にはリハビリが欠かせないと、中川医師は話す。

「手術で例えば50度しか上がらなかった腕が150度まで上がるようになった人でも、術後に痛いからと動かさずにいれば、関節の拘縮が再発することがあります。術後のリハビリは非常に重要です」(中川医師)

 一方、手術の目的で肩治療の専門医に紹介されてくる患者の中には、適切なリハビリをすることで徐々に肩関節の可動域が広がり、結果的に手術を回避できる人も少なくないという。

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