春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。新刊書籍『春風亭一之輔 師いわく』(小学館)絶賛発売中です。人生相談の本です!
春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。新刊書籍『春風亭一之輔 師いわく』(小学館)絶賛発売中です。人生相談の本です!
イラスト/もりいくすお
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 落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「伝統」。

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 常日頃「○○が好き!」と言ってると、お客さんがその○○を差し入れてくれることがある。ただ「お金が好き!」と言ってもなかなか真に受けてもらえないようです。

『ペヤングソースやきそば』が好きで、たびたびペヤングが届くようになりました。「白飯にペヤングをかけて食べる背徳感最高!」と言ったら『サトウのごはん』と『ペヤング』と割り箸が1セット届いたことも。「楽屋で食べな」ということかな。家族がいないときに独り貪るのがいいんですけどね。

 もっと言うとですね……あのちょい辛なソースでご飯を炊いて食べるのが美味い! 1袋に対して1合のお米。青のりと“あのスパイス”をかけたらペヤングライスの出来上がり。……となると、ソース無しの「麺のみペヤング」が一つ出来ちゃうんですが、そんなときはもう一つペヤング買ってくる。そのソースをさっきの「麺のみ」に使って、またペヤング買ってきて、そのソースをさっきの「麺のみ」に……。順繰りにやってるうちに、私は恐らくいまわの際です。足腰が立たず、ペヤングを買いに行くこともままならず。故に使うソースがない! どうしたらいい!? だがご心配なく!! その頃の私はすでに自分でソースの調合が出来る身体になってるはず。冷蔵庫にあるものでソースを作り、最後のペヤングは自分のオリジナルソースを使う。そりゃ本家には敵うはずありません。「やっぱり本物で食べたかったな……でも俺の『ペヤング』もまんざらじゃ……」。これが私の最後の言葉。それがペヤングに殉ずるってことではないか!? 私はそう思うのです!!

 ……閑話休題。最近はペヤングもいろんな「変わり種」があります。『パクチーレモン味』『チョコレート味』『かきあげ味』……なら、かきあげそばを売ればいいのでは、なんて言っちゃダメ。話題になった『超超超大盛GIGAMAX 2142kcal』。白飯を同量のせたらちょっとした“餌”みたいだったけど、4分の3超えたあたりから気持ち良くなってきた。これぞペヤングハイ。ペヤングって合法ドラッグ? こないだ出たのが『限定販売 金粉入り』。カップやきそばと金粉。庶民とゴージャスの融合。いやいや、ゴージャス要らないから。ペヤングユーザー層は金粉かけるなら、青のり増やしてほしい層ですよ。考え過ぎちゃったのか、何も考えてないのか……。

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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