でも続々と新種が出るたびに「相変わらずやっとるのう~」と嬉しくなってしまいます。金粉なんか完全に悪ふざけに近いと思うのですが、なんか許せる。というのも、やっぱりちゃんと基本が出来てるからですよ。色モノペヤングの間にオリジナルペヤングがドーンと控えていてくれる、帰る場所がある安心感。この『伝統』の重みが強み。

 でもペヤングはその『伝統』に甘えることなく常に前のめり。これは落語家の姿勢にも通じる。「やらなくてもいーんじゃない?」と周りが眉をひそめることも、とりあえず前のめりにやってみる。冒険から何が生まれるかわからないもの。もちろん『伝統』も大切に。そう。私の理想の落語家は『ペヤング』。ちなみに……どうやらソースはボトルで売ってるらしい。なんと! でも私はそれに頼ることなく、少しでも師匠に近づくさ。

週刊朝日  2019年5月24日号

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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