コリア・レポート編集長の辺真一氏も「西側メディアを意識したパフォーマンスに過ぎない」と手厳しい。北朝鮮問題をめぐって、“番外編”が演じられたということのようだが、では“本編”の米朝交渉はどう展開していくのだろうか。辺氏はこう見る。

「いま、米朝はどちらも引き下がれない状況です。とはいえ、互いに相手が譲歩すれば対話する用意がある、と言い合っている。どちらが先に譲歩するかが焦点でしょう。北朝鮮が非核化を目指し、そのうえで米国が体制保証を与えることは、すでに合意しています。歩み寄りは決して困難なことではありません。北朝鮮側も制裁解除要求は引っ込める方針です」

 4月11日、ワシントンで米韓首脳会談が行われた。辺氏によればこの時、トランプ大統領は文在寅大統領に、金正恩氏への親書を託したという。辺氏が続ける。

「親書の内容は分かりませんが、新たな提案をしている可能性は高い。トランプ大統領は、親書に対する正恩氏の反応を早く知りたいと言っているようです。この5、6月のうちに4度目の南北首脳会談が開かれるかどうかがポイントです。実現すれば、3度目の米朝首脳会談の実施、さらには7月27日の朝鮮戦争休戦協定の日(1953年)に、朝鮮戦争の終結宣言へと結びつく可能性もあります」

 膠着した米朝関係が好転する兆しはあるのだ。
 こんな時に余計な騒ぎは起こしてほしくないというのが、米朝を含め国際社会の本音だろう。自由朝鮮がスペインの大使館から奪い、FBI側に渡したとされる資料も、すでにスペイン当局に返却されたという。

 今回、逮捕されたアン容疑者は漢率氏救出で主導的な役割を果たしたとされ、ホン容疑者にしても著名な人権活動家だ。米当局もスペイン側に身柄を引き渡すわけにもいかず、実質的に“保護”しているとの見方さえ出ている。ともあれ、自由朝鮮の活動が封じ込められたのは、間違いなさそうだ。(本誌・亀井洋志)
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