ジャーナリストの田原総一朗氏は、昨夏閣議決定したエネルギー基本計画を「無責任な計画」という。
* * *
3月11日は東京電力福島第一原発の深刻な事故から8年であった。
国内で原子力発電所を建設してきた東芝、三菱重工業、日立製作所などは、国内での新設の展望がないと捉えて、東芝は米国、三菱重工はトルコで原発を建設する計画を立てた。だが、いずれも不可能ということになった。そして、日立が最後の望みを懸けていた英国も、1月に可能性なし、となった。海外での建設展望もなくなったのである。
東電の原発事故ののち、「原発ゼロ」を訴える声が大きくなり、現在では国民の半分以上が原発はなくすべきだと求めていて、小泉純一郎元首相は、さまざまなメディアで「原発ゼロ」を強調している。
実は小泉氏は、首相時代は原発推進論者であった。その小泉氏が「原発ゼロ」に転じたのは、2013年にフィンランドに原発の実情を視察に行ったときからである。
フィンランドは原発が稼働していて、使用済みの核燃料を処理するために、オンカロという設備が設けられている。
オンカロとは、安定している地盤を約500メートル掘って、そこに使用済みの核燃料を運び込むことができる設備だ。ただし、まだ実際には使用されていない。
小泉氏はオンカロの関係者に、「オンカロに使用済みの核燃料を入れて、それが無害化するのにどのくらいかかるのか」と問うた。
すると、無害化するのに10万年、という答えが返ってきた。
それを聞いて、小泉氏は原発をなくすべきだ、と決断したのである。
ところが、日本にはそのオンカロもなく、オンカロをつくる計画も展望もないのである。
私は歴代経産相に確かめたのだが、いずれも、その点では返事に窮した。
そして、使用済み核燃料はすでに1万8千トンもたまっているのだ。それでいて、政府は原発を重要なエネルギーとして再稼働を進めている。
しかも、18年7月に政府が閣議決定したエネルギー基本計画によれば、何と30年に原発が30基ほど稼働することになっている。