■自分に合った説明をしてもらうには

 患者が医師の説明を理解できずに悩んだり、医師のメッセージが正しく伝わっていないケースは多い。自らも精巣腫瘍や甲状腺がんを経験した「患医ねっと」代表の鈴木信行さんは、

「患者の理解度に差があるのに、同じように説明されていることも原因の一つです」

 と話す。患者は医療の知識がゼロの人もいれば、医療者レベルの知識がある人までさまざまだ。しかし医師にはそれがわからないので、どの患者にも同じように説明し、理解できた人もいれば、さっぱりわからない人もいる状況が生まれてしまう。自分に合った説明をしてもらうにはどうすればいいのか。鈴木さんは「医師の目の前でメモを取ること」を勧めている。

「診察中に私がメモしていたら、『神経鞘腫』という初めて聞く言葉が出てきて、漢字もわからないので『シンケイショウシュ』とカタカナで書いたんです。主治医がそれに気づいてわかりやすく説明してくれました」

 何度もペンが止まる、わからないところやポイントのみメモしているなど、メモを取る様子は相手に自分の理解度を伝える手段になる。

「また、A子さんのように面と向かって医師に質問したり意見を伝えたりすることが苦手な患者も、メモを活用してほしい」

 と、鈴木さんは言う。メモには診察前に、医師に伝えたいことや確認したいことなどを書いておく。こうすることで、質問が絞り込めるだけでなく、聞き漏らすこともなくなり、限られた診察時間を有効に活用できる。

 文字で「見える化」することは何に悩んでいるか整理できるだけでなく、自分がどう生きたいのかを考えることにもつながっていく、と鈴木さんは言う。

「たとえば『副作用が強くてもからだの一部を失ってもがんを治すための治療が一番、それが患者さんのため』と考える医師は多いでしょう。でもそれは自分の希望と違うかもしれない。病気は、今後の生き方や死に方を考えるいい機会。それを主治医に伝えることが大事です」

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診察がストレスになったら…