イラスト/高田茂和
イラスト/高田茂和

「主治医との関係がうまくいかない」と悩む患者は少なくない。主治医側に原因があると考えてしまいがちだが、患者側にもできることがたくさんある。週刊朝日ムック「手術数でわかるいい病院2019」では、患者が身につけたい医師とのコミュニケーション術を取材した。

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 患者にとって主治医は心身ともに支えとなる存在だ。しかし子宮頸がんを治療中のA子さんは「主治医と話すのが怖い」と話す。主治医はいつも忙しそうで、診察では一方的に話し、A子さんは聞きたいことがあっても遠慮して質問できなかった。不安になってがん専門の相談機関に相談すると「患者は素人。わかるまで何度でも主治医に聞いていい」とアドバイスされた。A子さんは言う。

「背中を押され主治医に質問をしてみたところ、専門用語ばかりの短い答えで解決にならない。もう一度詳しく聞こうとすると『前に説明したはず。同じことの繰り返しです』と。誰にでも当てはまるアドバイスではなかったと思い知らされました」

 医師とうまくいかない原因はさまざまだが、がん患者の相談に応じているマギーズ東京キャンサーサポートスペシャリスト(看護師)の岩城典子さんはこう話す。

「医師が冷たいわけではなく、少し言葉が足りなかったり、わずかなボタンの掛け違いもあるのだと思います」

 大学病院で消化器がんの治療を受けていたBさんのケースでは、がんの新薬として話題のオプジーボを自分にも使えないか聞いたところ、主治医からは「そんなものは必要ない。標準治療を受けていればいい」という言葉が返ってきた。

 見放されたように感じたBさんだが、後日、主治医の真意が判明した。「標準治療」は現段階で最も効果があると証明された治療だが、「並」の治療だと勘違いされやすく、Bさんもオプジーボが最善の治療だと考えていた。しかし主治医にしてみれば「標準治療で順調に良くなっているので、まだオプジーボを使用する段階ではないんですよ」との思いだったという。

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