■眼圧低下効果が高い線維柱帯切除術

 線維柱帯切除術は、線維柱帯の一部を切除して小さな穴をあけバイパスをつくり、結膜の下に、いわば水たまりのようなろ過胞をつくる。房水は毛様体でつくられ、線維柱帯というフィルターを通り、シュレム管から排水された後に静脈に流れ込む。房水の排水経路が確保されれば、眼圧低下が期待できる。

「線維柱帯切除術は十分な眼圧低下が期待できます。眼圧は10~20‌ミリメートル‌Hgが正常とされており、下げすぎるのも危険ですが、一桁(9以下)をねらうことも可能です」(相原医師)

 ただし、線維柱帯切除術は術後の管理が難しい。手術の結果、本来は房水と接することのない房水の排出先周辺(結膜)では、房水を異物としてとらえ炎症が起こる。これが癒着を引き起こし、バイパスが塞がれてろ過胞が機能せず眼圧を下げられなくなるおそれがある。そこで癒着を防ぐため「できた傷を治りにくくするような」点眼による微妙な薬物療法が求められる。

 チューブシャント手術は、房水の通り道として極細のチューブや、房水の排出先を広く確保するプレートを埋め込む。緑内障のインプラント手術とも呼ばれ、用いるインプラントにより大きく2種類に分けられる。

 プレートなしインプラントは、線維柱帯切除術と同様の成績で安全性は高いが、費用が線維柱帯切除術の約1・5倍かかる。一方、プレート付きインプラントは、費用が約2倍かかり、眼圧が下がりすぎることや、チューブで角膜を傷つけやすいともいわれている。

「まず線維柱帯切除術やプレートなしインプラント手術をおこない、それでも生涯、視野を維持できるだけの眼圧低下が得られない場合は再手術もあり得ます。手術を繰り返し、手術に伴う眼の障害などでこれ以上通常の手術は難しい場合に、プレート付きインプラントのチューブシャント手術を検討します」(富田医師)

 富田医師は開放隅角緑内障の薬物療法と絡め、次のように述べている。

次のページ
小さな傷ですむ手術「MIGS」