「薬物療法で十分な眼圧低下が得られず、使用する点眼薬が増えて、点眼のわずらわしさから使用をやめてしまうケースもあります。初期から中期なら、薬を減らすために線維柱帯切開術をおこなうこともあります」

■小さな傷ですむ手術MIGSが普及

 線維柱帯切除術では、線維柱帯に「穴をあける」が、この切開術では「眼の外から」結膜(白眼)を切り、シュレム管を露出させて、線維柱帯に「切れ目を入れる」。線維柱帯切除術と比べて眼圧低下の効果は低いが、合併症が少ない安全な手術である。さらに、MIGS(低侵襲緑内障手術)という、2ミリ程度のごく小さな角膜の傷だけですむ、「眼の中から」同様の線維柱帯切開をおこなう手術が、数年前から普及してきた。

 MIGSには、角膜の小さな傷口から器具を眼内に入れてシュレム管を切開する方法のほか、白内障手術との併用で、シュレム管にドレーンという極細のチューブを挿入する方法もある。

 線維柱帯切除術・切開術などでは手術時間が30~40分かかり、術後は入院が必要となるが、MIGSは小さな傷ですむうえ、手術も10分程度である。病院によっては日帰り手術も可能だ。

 ただし、MIGSにはまだ限界があり、それを相原医師が指摘する。

「MIGSを含む線維柱帯切開術は、眼圧を15‌ミリメートル‌Hgくらいまでしか下げられません。生涯、視野を確保するために10くらいまで下げる必要のある末期の緑内障の場合や、もともと眼圧が低めで、現状よりさらに下げることが難しい場合には向いていません」

 どのような手術でも眼圧が十分に下がらない場合、房水をつくる毛様体をレーザーで焼く手術もある。

「房水がつくられなければ眼圧が下がる、という効果をねらった手術です。ただし、焼きすぎると眼圧が下がりすぎて、眼を傷めることになります。手術の効果を確認しながら少しずつ焼いていきます」(相原医師)

 手術で房水の排水が確保されれば、開放隅角緑内障はもちろん、閉塞隅角緑内障であっても、術後の眼圧によっては、薬物療法を続けることもある。

「有効で安全な手術が普及しています。適切な時期に手術を受けられるように、治療を継続することが重要です」(富田医師)

◯東京大学病院眼科教授
相原 一医師

◯東邦大学医療センター大橋病院眼科教授
富田剛司医師

(文/近藤昭彦)

※週刊朝日3月8日号から