一つの作品をとことんまで掘り下げられることは、表現する仕事に関わった者の醍醐味だという。そうして20代のとき漠然と衝撃を受けたサルトルの「出口なし」が、演劇と舞踊の境界を超える作品として、この冬、再構築されることに。原作戯曲は密室の会話劇だが、セリフを減らし、登場人物たちの内面を、演者の肉体で表現していく意欲作だ。

「とても大胆な構成ですが、演劇と舞踊がミックスしたメソッドが新たなジャンルとして普及していくきっかけになればいいなと思います。100年先も残っていける作品になれば。ベジャールさんの振り付けた『ボレロ』は、映画『愛と哀しみのボレロ』のジョルジュ・ドンさんが有名ですが、元は、彼のために振り付けられたものではない。10年後、たぶん僕はこれをもう踊れないけれど、未来の誰かに『ぜひやりたい!』と思ってもらえるような、いつか“古典”と呼ばれるような、そんな作品になることを願っています」

週刊朝日  2019年1月25日号