オーディションで最後に何か質問があるかと聞かれ、「質問ではないのですが、この役を日本人に選んでくださってありがとうございます。日本ではナルコレプシーはまだ広く認知されていないので、この作品を通じてこの病気について日本でももっと広く知ってもらえたらと思います」と伝えた。

 出演が決まり、後日、台本読み合わせの時に監督から「実は、二次審査からオーディションに同席した別のキャスティングディレクター自身がナルコレプシーなんだよ」と告げられたという。

 米国に渡り、ハリウッドで活躍する俳優の言葉通り、“遅咲き”の気後れ感は一気に解消された。

 まず、エージェントとの契約に年齢制限がなく、年齢が俳優としての能力を判断する基準にならない。年齢による上下関係がなく、対等に接する米国文化が影響しているとも思えた。

「米国では、アジア人は特に若く見えるので、私がいただく役はほとんど20代で、30歳で高校生の役を演じる俳優もいます。幅広い年齢層の登場人物の中で、そのキャラクターに合っているか、その年齢に見えるか、ということが重視され、実年齢は基本的に聞かれたことがありません。そういった意味では、私を含め、日本では遅咲きと言われる年齢の俳優にもチャンスが開かれているのがハリウッドだと思います」(坂本)

 米国は、俳優にチャンスが豊富にあるだけではなく、労働環境も整っているのが魅力だ。撮影現場は「ユニオン」という俳優の労働組合に守られているという。

「食事の時間や撮影時間がきちんと契約されており、違反した場合は、ペナルティーとして俳優らに賃金が支払われるため、ある程度過酷な労働から守られていると思います。オーディション会場でも一定時間以上待たせるとペナルティーとなる場合があるので、キャスティングディレクターの方が監督を急がせているのを見かけたりもします」(坂本)

 撮影現場では、監督と俳優がシーンやキャラクターについて対等の立場で意見交換をしたり、俳優同士でも「良い」と感じたらすぐに褒め合ったりするのが印象的だという。

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