「私のような新人でも、監督と意見交換をし、自分の意見をしっかりと伝えることが求められていて、日本の現場で協調性を重んじて萎縮しがちだった自分に気付かされました」(坂本)

 食事は体調管理を考慮して、和食が中心。日本食スーパーに出かけて購入するみそやしょうゆといった調味料や納豆は常に自宅にストックし、自炊を心がけているという。

「とにかくオーディションの数が多く、前日や当日にエージェントから連絡が入ることも多々あります。車の移動がほとんどで、ロサンゼルスは渋滞も多いので、1時間以上かかってオーディション会場に到着し、5分で終わって帰ってくることもあります。長時間の運転が多いので車の中ではスピーチレッスンを録音したものを聞いたり、ラジオを聞いたりして、英語に触れるようにしています」(坂本)

 撮影以外は英語のスピーチコーチのレッスンや、日本舞踊、アクションクラスに出かけ、最近はジムのプールにもよく通っている。

「映画でキャストされた後に『プールで飛び込みと潜水で泳ぐシーンがあるんだけれど、泳げるか?』と聞かれ、平泳ぎですら2メートル進むと沈んでいくほどで、猛練習のためにプールに通い始めたんです」(坂本)

 それをきっかけに水泳が好きになり、時間を見つけては体力作りのために泳ぐようになったとか。

 撮影前は役作りで作品の世界にひきこもることが多いようで、撮影後はキャンプ、ハイキング、ビーチ、公園に出かけ、少し足を伸ばせば山にも海にも行けるロサンゼルスの環境を「フル活用」し、自然に包まれながらボーッとしてリフレッシュする習慣がついたという。

「最近は特にホラー作品(11月15日からアメリカで配信されているホラー映画Shudder TV『DEAD WAX』のシーズン1に坂本はLily Child という役で出演)が続いていたので、世界中のホラーを見尽くしたんじゃないかというくらい映画を見ていたこともあり、寝ても覚めても頭がホラー一色になっていたので、この環境が近くにあるのはありがたかったです」(坂本)

 今後の目標を聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

「渡米前から変わらない目標は、日本と海外の歴史を描いた合作映画やドラマに出演していくことです。日本の伝統文化の美しさや素晴らしさを世界に伝えていきたい」

 広島に生まれた坂本にとって、もうひとつテーマがあった。

「原爆や戦争の恐ろしさ、平和への願いを身近に聞き育ったものとして、その思いを伝えていきたいと思っています。そのためにも、米国の文化の中にいながらも、私の敬愛する『昭和の女優』の方々を始め、日本人女性の中にある、奥ゆかしさの中にある凜とした強さみたいなものを今後も学び、自分を磨いていきたいと思っています」

(野島茂朗)

※週刊朝日限定オリジナル記事