「祖父母の孫育参加は、基本的にはパパ・ママからSOSを出されたときでいいんですよ」(尾木さん) (イラスト/坂本康子)
「祖父母の孫育参加は、基本的にはパパ・ママからSOSを出されたときでいいんですよ」(尾木さん) (イラスト/坂本康子)
 (週刊朝日 2018年12月28日号より)
 (週刊朝日 2018年12月28日号より)
「相手が自分の思いどおりになるうちはいいかもしれませんが、そうならなくなったとき相手に牙をむく可能性も」(出口さん) (イラスト/坂本康子)
「相手が自分の思いどおりになるうちはいいかもしれませんが、そうならなくなったとき相手に牙をむく可能性も」(出口さん) (イラスト/坂本康子)
「孫と祖父母の距離が近すぎると、“孫ブルー”から解放されません。私は私、孫は孫という気持ちも大事」(河村さん) (イラスト/坂本康子)
「孫と祖父母の距離が近すぎると、“孫ブルー”から解放されません。私は私、孫は孫という気持ちも大事」(河村さん) (イラスト/坂本康子)

 少子高齢化社会のひずみか、孫との距離感に悩む祖父母が増えている。第一生命経済研究所が15年に公表した「祖父母による孫育て支援の実態と意識」の調査結果では、祖父母の54.3%が「親自身で行うべきだが、引き受けるべき」と回答している。孫育は親自身がやることだが、子供のために引き受けている祖父母は多いのだ。孫と祖父母の心地よい関係はどう築いていくべきなのか。ライフジャーナリストの赤根千鶴子が、孫育の未来を考える。

【アンケート結果】祖父母に頼ること、祖父母が引き受けること、どう考えますか?

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 シニアが、自分の人生も楽しみつつ、自分の子供や孫との良好な関係を築いていくにはどうしたらいいのだろうか。

「孫ブルー」という言葉の生みの親で子育てコンサルタントの河村都さんは言う。

「まず、孫が生まれた瞬間から『客観的な気持ち』を忘れないことです」

 客観的な気持ちとは?

「この子は『孫』であって、自分の子供ではない。私が育てるわけではないという、ある一定の距離感を持った気持ちです。少子化の時代ですから、どうしても“待望の孫”“初孫”が誕生したとなると、ついつい気持ちが孫にのめり込んでしまうこともあります。でもその子の『親』はあくまでも、自分の子供とその配偶者なのだという意識をもつことです」

 教育評論家で“尾木ママ”として親しまれている尾木直樹さんも言う。

「初孫が生まれたときに起こることが多いのですが、やはり祖父母は『孫フィーバー』状態にならないこと。アポなしで週に何回も孫に会いに行ったり、孫に大量にプレゼントしたり。孫を溺愛するあまり、孫の親の子育て方針を乱して困らせてしまう話もよく聞きますからね」

 そしてフィーバーが冷めたら「あとは自分たちでやって」では、調子のいい祖父母にしか見えないだろう。

 また尾木さんは、孫が生まれた女性の「ママ返り」にも警鐘を鳴らす。

「これは働いていた女性に多く見受けられる現象です。どうしても家事・育児の負担が重くなりがちな女性は、仕事との両立に必死にならざるを得ず、子育てに対する悔いがたくさん残っている方も多いわけです。そこで退職したころに孫が生まれたりすると、まるで『2回目の子育て』のような気持ちになってしまう」

 今度こそ、大丈夫。昔あなたのパパ、ママにやってあげられなかったことを、バアバはあなたにしてあげるわ。そんな半ば“罪滅ぼし的”な意識も働いて、祖母が「孫のママ」になろうとする。これはもう、孫・孫の親・祖父母の関係を混乱させる“いい迷惑”にしかならない。

「祖父母はあくまでも、パパ・ママのサポーター。そのスタンスは徹頭徹尾通すことです」(尾木さん)

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