孫は永遠に赤ちゃんであるわけではない。心も体も成長し、大人になっていく。でもその一方で祖父母世代は、個人差はあるが加齢と共に体力は確実にダウンし、いつまで健康を保てるかは未知数だ。ある日突然、「もう体が疲れるからやめる」と祖父母が放り出したら破綻するような孫育システムは、やはり初めから組まないようにするべきなのである。

 しかし頭でわかってはいても、理屈どおりに行動できないのが、人間だ。

「一番よくないのは、祖父母と孫が『共依存(きょういぞん)』という関係に陥ってしまった場合です。親は仕事で不在。孫は当然、祖父母に甘えてきます。祖父母には孫に対する『監督責任』はありませんから、子育ての『厳しい追体験』は排除して、『楽しい追体験』を孫としようとします。そこからお互いに依存する『甘えた関係』が始まる。これが共依存です」

 と語るのは犯罪心理学者で、東京未来大学こども心理学部長の出口保行さんだ。自分たちがコントロールするように子供は育つから、そこは楽しい。そうすると孫の中にも、この先何か困ることがあっても「最後は祖父母に助けてもらえる」といった甘えが生まれる。

「これは放っておくと、互いの『自己中心性』に歯止めがかからなくなることもあります。そして生まれたときから、自分の言うことは最後には聞いてもらえる、許してもらえると思っている子供は当然、時として犯罪に近づいてしまう危険性もあるのだということを忘れないでほしいですね」

 また共依存は、孫の自立の妨げにもなる。

「思いどおりにならないことが何もないまま育った子供というのは、成長したのち思いどおりにならないことに出会ったときに挫折しやすいのです」

 思いどおりになることばかりだと、人はどんなことでも自分に門戸が開かれていると勝手に思い込んでしまう。

「小さいときは、周りにいる大人の助力によって何とかなってしまうことも多いですよ。でもそののち、『サッカー部でレギュラーになりたい』『○○大学に進学したい』といった自我や希望が子供自身の中に芽生えてきたときは、もう自分で門戸を広げるしかないでしょう? 自分自身が努力しなかったらどうにもならないことは、大人になればなるほど増えますよね。でも祖父母を始めとする大人たちに甘やかされて育った子供というのは、それに耐える力が実に弱いのです」

 心がポキッと折れて「もういいや」と投げやりになったり、ふてくされたり。

「あるいはそれまで自分の手助けをしてくれていた祖父母に攻撃的になることもあるのです」

 このような状況を生まないようにするためには、

「孫が小さいときに、孫が喜んでくれるからという理由で、孫が望むことを何でもかなえてあげようなどとしないことです」

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