ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する
ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する
※写真はイメージ (c)朝日新聞社
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 ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は「花田家」を取り上げる。

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 日本語というのは非常に細やかで難しい言語です。例えば『小泉元総理』の『元』は、小泉さんの職歴や肩書に対して付く言葉であり、「以前は総理大臣だった小泉さん」という意味になります。一方で『野田前総理』の『前』は、『総理』を説明するための言葉となるため、意味合い的には「1代前の総理は野田さん」ということになります。間違っていたらごめんなさいね。

 巷でも『元カレ』『元カノ』といった言葉がよく使われますが、ひとり前の彼氏だろうと、ふたり前の彼女だろうと、この場合は「以前付き合っていた人」であることには変わりないので表現としては問題ありません。しかし仮にビッグダディが美奈子さんを「前妻」と呼んだとしたら、それは間違いです。ビッグダディは美奈子さんと離婚した後に3回結婚して3回離婚しています。よって美奈子さんはビッグダディの『元嫁』ではあっても『前妻』ではなく『前前前前妻』となります。RADWIMPSのヒット曲は『前前前世』だったので、美奈子さんの方が前ひとつリードです。ちなみにビッグダディの最初の奥さんは『元祖元嫁』と呼ぶそうです(Wiki情報)。

 日本語は難しい。今週も貴乃花離婚のニュースを観ながら改めて感じた次第です。貴乃花さん、間違いなく日本で最も『元』と『前』に囲まれて生きている人ではないでしょうか。まずご自身の遍歴を見ても相当なものです。四股名や呼び名だけでも『元貴花田(元藤島部屋所属)・元二代目貴ノ花(部屋の合併により元二子山部屋所属)・元横綱貴乃花・元二子山部屋改め元貴乃花部屋の元一代年寄貴乃花親方』となります。さらに相撲協会での役職なども加えると、冗談抜きでここでは書ききれないほどの元遍歴の嵐です。このたびの相撲協会退職や離婚などを経て、いよいよ『貴乃花をどう呼べば正解か問題』はのっぴきならない段階へ来ています。まずは正式芸名を決めるのか、はたまた本名の花田光司へ戻すのか、そちらの表明も早急に望まれるところです。

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