「米国では9割接種を目標とし、スーパーの横にブースを設けたり、ドライブスルーで受けられるようにしたりしています。日本では接種しやすさを工夫しておらず、啓発活動が足りていない。元気だから大丈夫だろうと“打ち控え”する高齢者も多いのです」(同)

●今年はワクチンは不足しないの?
 昨年はワクチンの製造過程で培養が思うように進まず作り直したため、供給不足に陥った。12月に入っても接種できない人が多く、ニュースになった。

 では、今年は大丈夫かといえば、そうとも言い切れない。永井さんは「実は今年も供給のスピードが遅い」という。

 厚生労働省の資料によると、12月中旬の見込み供給量(累積、製造量)は2660万本に上るが、永井さんは「供給の時期が問題だ」と指摘する。

「当院ではワクチンは例年並みの確保ができず、接種開始時期が遅れました。一昨年と同様の供給量になるのは12月初旬です。最終的な予定供給量は十分かもしれませんが、例年のような供給スピードではなく、なぜこんな状況になっているのかまったく解せません」(同)

 これに対し厚労省は、供給スピードの立ち上がりが遅れたことを問題視していない。

「ワクチンは鶏卵の中で株を培養することで製造されるため、工程の一部に不確定な要素が含まれます。今年の見込み供給量は、昨年を除く過去5年の平均使用量より多く、医療機関が仕入れるまで少し時間がかかるかもしれませんが、12月中旬までには十分な量が供給されると考えています」(健康局健康課)

 予防接種を打ちにいく際は、事前に医療機関などに問い合わせるか、ホームページなどで確認したほうがよさそうだ。

●インフルエンザが持病を悪化させることも?
 意外と知られていないのが、高齢者にとって非常に危険な病気であること。インフルエンザによる入院や死亡は、年齢が高くなるほど増える。

「インフルエンザが肺炎の二次感染を起こすこともあり、健康な高齢者でも気を付ける必要がある。それ以上に問題なのは持病がある高齢者。COPD(慢性閉塞性肺疾患)や糖尿病などを悪化させ、心筋梗塞や脳卒中などを引き起こす要因になります」(永井さん)

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