例えば、動脈硬化がある人がかかると、全身に生じた炎症反応や脱水によって血栓ができやすくなる。その結果、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まる。炎症が起こった気道に他の細菌などが感染すれば、肺炎や敗血症といった致命的な病気にかかる恐れもある。

「大事なのは予防。高齢者で持病がある人は予防接種は必須。手洗いやうがいを励行し、流行が始まったら大勢が集まる場所は避けましょう」(同)

●症状が軽い人もいる?
 インフルエンザというと、高熱や筋肉痛、咳(せき)といった症状を思い浮かべる。だが、典型的な症状を伴わず、鼻風邪程度の症状しか現れないこともあるという。

 今は簡易診断キットがあるため、罹患(りかん)しているかどうか確認しやすい。永井さんの外来でも、「症状は軽いけれど念のため」という患者に検査をすると、A型やB型が見つかることが少なくないそうだ。

「症状が軽い人は、予防接種を受けたか過去に同じインフルエンザにかかるなどして、抗体をすでに持っている可能性が高い。実はそういう人が仕事などで外出し、感染源になる可能性は否定できません」(同)

 鼻水や咳程度でもエチケットとしてマスクをし、手洗いをすること。マスクは予防ではなく、感染させないためにするものだ。

●高齢者施設などの入居者の注意点は?
 毎年、ニュースになるのが高齢者施設での集団感染。有料老人ホーム・介護情報館館長の今井紀子さんは、施設によって対応に温度差があると打ち明ける。

「まず自立型と介護型とで異なります。自立型の場合は基本的に元気な高齢者が入居している。施設側に予防接種の強制力はなく、するかしないかは本人の判断。しっかりした施設では、打てる医療機関はここというように予防接種の具体的な案内をしています」

 介護型では予防接種がリスクになる入居者もいて、打ちたくても打てないこともある。入居者が認知症を患っている場合は、シーズン前に家族に予防接種をしてもよいか尋ねる承諾書が送られてくることが多い。また入居者の家族が連れていって、医療機関で接種させる例もあるそうだ。

「施設での集団感染のきっかけは、面会に来た家族らがウイルスを持ち込むこと。面会時にマスクや手指の消毒をするルールがなくても、気配りとして対策は取ってください。もちろん症状があるときの面会はNGです」(今井さん)

 今回のQ&Aを参考に、早めの準備と十分な対策を取ってほしい。(本誌・山内リカ)

週刊朝日  2018年11月23日号