葬式のときは、お焼香の台を灰皿にして、来た人にたばこの煙をかけてほしいですね。墓はなくていいので、遺骨は粉にして海に捨ててほしいと、妻に言ってあります。

 でも、まだまだ引退するつもりはありません。創作意欲もアイデアも、衰えてはいません。以前、舞台の脚本で室町時代から江戸時代にかけて日本に派遣された朝鮮通信使のことを書いたのですが、それを韓国で映画にしようという話が進んでいます。決まったら、脚本を手直ししなきゃいけない。10月上旬にもその話をするために、釜山国際映画祭に行ってきました。

 この職業のありがたいところは、死んでも作品が消えるわけじゃないこと。僕の作品を覚えてくれている人がいるうちは、僕はその人の思い出の中で生き続けていられる。それが、僕にとっての「もう一つの自分史」なんじゃないかな。

 なんて、ちょっとカッコよく言いすぎちゃったから付け加えると、女性の思い出の中でも、なるべく生き続けていたいと思ってます。(聞き手/石原壮一郎)

週刊朝日  2018年11月9日号