退院してからは、書きあげるまでは死ねないという思いで取り組みました。ありがたいことに、「澪つくし」の最高視聴率は55%に達して、日本文芸大賞脚本賞もいただきました。

 あのときの沢口靖子はかわいかったですね。けっして演技がうまいわけじゃないんだけど、そこがまたよかった。

 でも、彼女はたばこを吸う人が嫌いだったんですね。僕はヘビースモーカーなんです。たばこをやめるぐらいなら死んだほうがいいと本気で思っていたので、僕は彼女よりもたばこをとってしまった。もちろん、僕が勝手に残念がっているだけで、向こうにはそんな気はまったくなかったと思います(笑)。

――87年にはNHK大河ドラマ「独眼竜政宗」が放送。歴代最高の平均視聴率をたたき出した。その後も「八代将軍吉宗」(95年)、「葵 徳川三代」(2000年)と、大河は合わせて3度担当した。

「葵 徳川三代」で徳川家康を演じた津川雅彦の演技は、じつに見事でしたね。彼は「澪つくし」でも、大事な役をビシッと演じてくれました。

 8月に亡くなってしまいましたが、残念ですね。仕事だけじゃなくて遊びでも、たくさん思い出があります。僕のことを「自分にとっての三種の神器のひとり」と言ってくれていたみたいだけど、なんだかくすぐったいですね。

――仕事は途切れず、83歳の今も現役だ。そして、私生活では元国際線客室乗務員で27歳年下の女性と、19年前に再婚した。

 妻は明るくて、性格がカラッとしています。レストランで前菜が出てくると「私は後妻です」なんてダジャレを言ったりする。いやあ、もう女性関係のトラブルはありませんよ。たしかに昔はいろんな経験をさせてもらって、女性からたくさんのことを学びました。それがきっとドラマ作りに生きたし、自分の財産になっていると思います。

 僕もこの歳だから、いつ死ぬかはわからない。これまでさんざん大病しているから、きっとある日突然、パタッと逝くんじゃないかと思っています。人間は、いくつになってもわからないことだらけ。いつまでもその答えを追い求めていくんでしょうね。そして、わからないことを抱えたまま死んでいく。女性とは何だろう……なんて思いながらね。

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