直観とは別に直感という言葉もあります。こちらは少しニュアンスが違うようです。辞書を調べてみると、直感は心で直ちに感じ知ることであり、直観は精神が直接に知的に把握することを指しているようです。直観は直知ともいいます。

 精神も心には違いないでしょうが、心の中でも知性的・理性的で、能動的・目的意識的なものをいうのです。対象を見る心のレベルが、直感より直観の方が高いということになります。ですから、戦略的な判断をするのは、直観の方なのです。

 直感も直観も心の大事な働きですが、認知症との関係を考えると、精神という心の中枢の働きである直観の方が重要です。直観力を高めることは認知症予防につながると考えられます。

 では、直観力を鍛えたり、磨いたりするにはどうすればいいのでしょうか。

 まずは、日頃から自分の直観を大事にすることです。この治療は自分にあわないようだとか、この薬は飲みたくないという思いがわいてきたら、その直観を軽視しないで主治医と相談してみてください。

 あるいは、麻雀のような勝負事や競馬のような賭け事も、直観力を鍛えることにはプラスです。好きでやっている勝負事や賭け事が認知症予防になると思うと、より楽しくなっていいではありませんか(笑)。

週刊朝日  2018年11月2日号

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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