バック・コーラスの叫び声をめぐっては“レニーがマイケルの物まねをしている”との風評も出たが、実際にはマイケルのアルバム『インヴィンシブル』(01年)で共演した際の音源を使用している。

 7歳のとき、マディソン・スクエア・ガーデンで見たジャクソン5のコンサートで、6歳年上のマイケルに憧れ、ミュージシャンになる決意をしたというレニーにとって、「ロウ」は思い入れの深い曲に違いない。

 今回のアルバムは、レニーがほとんどの楽器を手がけている以外、『自由への疾走』以来の付き合いで、エンジニアでもあるクレイグ・ロスがギター、デイヴィッド・バロンがキーボードでサポート。曲によってはホーンやストリングスも起用している。

 レニー自身が記したライナー・ノーツによれば、デビュー作から本作に至るまで、彼が伝えたいテーマはずっと変わらずに“愛”だといい、“我々は人類みなひとつということを理解しなければならない――起源と創造者を、すべての兄妹を、野生動物と自然を――国境なきこの地球上でシェアしていることを。誰かを憎む余地なんてないんだ”と訴えている。

 その言葉にあるように、本作にはメッセージ色の濃い曲が目立つ。代表格はファースト・シングルの「イッツ・イナフ」だ。70年代初期にカーティス・メイフィールド、マーヴィン・ゲイが手がけた曲を思わせるファンク・ロック・ナンバーだ。いまだに根強いアメリカでの人種差別問題、中東での戦争などについて触れ、“破壊と憎しみが 永遠に俺たちをやりこめようとしている”“目を覚まして 俺たちにやれることをやる時が来た”と歌う。

 アルバムは、シンセサイザーによる幻想的なイントロから、強靭なドラムスをフィーチャーした分厚くパワフルでダイナミックなサウンドで幕を開ける。“みんなでうまくやり遂げられる”と結束を呼びかける「ウィー・キャン・ゲット・イット・オール・トゥゲザー」だ。

「ロウ」をはさみ、3曲目は「フー・リアリー・アー・ザ・モンスターズ?」。イントロのヘヴィーなシンセ・ベースやドラム・マシンによるリフはプリンスのハード・コア版といったところ。“俺たちが爆弾を落としている限り 戦争はなくならない”と、戦争の仕掛け人たちを糾弾する。

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