自分では気づきにくい、いびき。パートナーの“騒音”は指摘しにくいが、それは病気のサインかも。死に至るものもあり、放っておくわけにはいかない。「死の予兆」を見抜いて、早めに治療したい。
寝ているときに息が止まる。しかも数秒ではない。ひどいケースだと2分近く止まり、体に大きな負担をかける──。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)という言葉を聞いたことがあるだろう。「ぐっすり眠れないだけでしょう」などと、考えているみなさん。甘く見ないほうがいい。
都内在住の会社員男性(50)は、こんな症状に長年悩んでいた。眠りが浅く、いつも目覚めが悪い。会議や車の運転中でも、うとうとしてしまうときがある。妻や娘は「いびきや歯ぎしりがうるさい」と、別の部屋で寝るようになっていた。
さすがにおかしいと感じて、3年前、専門の病院で「呼吸計測」を受けた。頭や指先、胸などに装置をつけて、寝ている間の呼吸の状況を調べたのだ。医師から結果を聞き、男性は驚いた。
「計測できた約4時間半の間に、10秒以上呼吸が止まる『無呼吸』が42回ありました。長いときには98秒も止まっていました」
「低呼吸」も62回あり、いびきは343回に上る。医師の説明によると、脳が酸欠を避けようとして呼吸器や循環器に緊急指令を度々出すので、心臓などに負担がかかるという。
男性は39歳のときに狭心症で心臓の手術を受けている。「無呼吸が心臓病を招いたのかもしれない」と空恐ろしくなった。
SASは成人男性の3~7%、女性の2~5%程度に見られるという。誰でもかかりうる病気だ。
御茶ノ水呼吸ケアクリニックの村田朗(あきら)院長のもとにも、多くの患者がやってくる。「いびきがひどくて眠れない」と、妻が夫を連れてくることが目立つという。
だが、最近はそこから意外な方向に進むケースが増えている。
受診したある男性は、村田院長からいびきの問題などの説明を受けた後で、妻を前にぼそっとこぼした。
「お前もだろ」