林:女性の医師って、出産のときは当然休みますよね。多くは男性医師と結婚して収入もあるし、そのまま復帰しなかったりするわけですか。

西川:そうですね。あと、開業医のご主人の病院で一緒に働くとか。私の学年で一緒だった子で大学病院にいる子はいないです。

林:いまだに「どうしても大学教授になりたい」っていう人いるんですか。『白い巨塔』みたいに。

西川:います。開業医より収入は少ないですけど、ステータスがありますよね。だからみんななりたがる。

林:学生の皆さん、偏差値や校風で医大を選ぶんですか。

西川:偏差値もありますし、校風と場所ですね。東京医大って早稲田みたいな校風で、バンカラなんです。東京にある医大って少なくて難しいんですけど、東京医大は新宿の一等地にあってみんな行きたいんです。でも、あそこはお父さんが東京医大を出た人を採る傾向だと言われていますね。

林:そうなんですか。

西川:この子は親がいくら寄付をしたとかいう過去の「裏口入学リスト」が報道されましたよね。東京医大は、医大の中では独立してる学校なんです。聖マリは慈恵医大の傘下とか、それぞれどこそこの傘下というのがあるんですが、東京医大は独立してる。だから東京医大出身のお父さんの息子のほうが寄付金がもらえるんですね。

林:東京医大は女性が嫌いだとか、バンカラだとか、お父さんが東京医大だと入りやすいとか、そういう情報はみんな知ってるんですか。

西川:知ってますよ。

林:東京医大、どうするんですかね。「もう女性差別しません」って世間に向かって言うんですか。

西川:東京医大が特殊なのは、辞任した臼井正彦前理事長は眼科の主任教授で、収入の5割以上は眼科で占めてたんです。だから発言力がすごく強かったんですね。

林:はい。

西川:そういう上の方が抜けて私たちの年代になったら、そんなに男女差別はないので、もう少ししたら変わってくるんじゃないですかね。昔は「神聖な仕事を女にさせるな」という感覚でしたけど、今の若い先生たちはそういう感覚がないので、その人たちが教授になったら変わってくると思います。

(構成/本誌・松岡かすみ)

週刊朝日  2018年9月21日号より抜粋

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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