支援をお願いするコツは、頼る相手を限定しないこと。一度にたくさんのことを依頼したり、何度も続けたりすれば、相手も嫌になってしまう。それは息子や娘、孫などの身内や仲の良い友人でも同じ。

「相手の得意な分野について少しだけお願いする。そのため相手がどんなことが得意で、どんな頼み方をすれば喜んで協力してくれるのか、想像力を働かせてみましょう」(同)

病気やケガ、災害時のため、食料は2週間分蓄える

 一人暮らしで困るのは、体調を崩したときだ。70歳から持病に悩む人が増えてくる。石川さんは「2週間分ぐらいの食料をストックしておくことで何とかなる」と話す。

 冷凍食品やレトルト食品などでもいいが、缶詰などそのまま食べられる食料も用意を。病気やケガで外出できなくなったときだけでなく、災害などでスーパーやコンビニなどが利用できないときや、停電や断水などで電気や水が使えないときにも、役立つからだ。

■一軒家より集合住宅、賃貸なら住宅セーフティ、ネット制度を活用

 持ち家の一軒家に住んでいるケースが多い高齢者。一人では掃除や管理が難しくなってくる。そのような場合、シェアハウスとして家の一部を人に貸す、家を売却して高齢者住宅に移り住むといった方法がある。事実、75歳以上になると、要介護認定率が上がり高齢者施設への入所が現実味を帯びてくる。

 高齢者施設で、昨今、注目されているのが「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」。なかでも、独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)や住宅供給公社の空き室をリノベーションして使う、分散型の高齢者施設が人気だ。高齢者だけでなく、いろいろな世代の家族が住んでいるからだ。コラムに登場するヒロコさん、ユキコさんなどの例は参考になるだろう。ちなみに老後の未来年表を見ると、サ高住入居者の平均年齢は82.1歳だ。

 賃貸はどうか。以前は高齢者の一人暮らしは家賃の滞納や孤独死などへの危惧から敬遠されていたが、最近はだいぶ借りやすくなってきたと中澤さんは言う。

「まだ数は非常に少ないですが、昨年から国土交通省が空き家活用などで高齢者の入居を促す『住宅セーフティネット制度』を始めました。自治体やURでも住宅相談に力を入れ始めています」

 これは、新たな住宅セーフティネット法に基づき、高齢者や低額所得者、子育て世帯などの「住宅確保要配慮者」に、事前に登録した民間賃貸住宅や空き家を提供する制度。全国の総登録戸数は3400件弱。大阪府が多く、まだ登録されていない自治体もあるが、注目の制度だろう。

■孤独死は前提。発見を早くするために“介活”を

 最後は孤独死。一人暮らしでは避けて通れない問題だ。2016年に報告された東京都福祉保健局東京都監察医務院の「東京都23区における孤独死統計」によると、15年の65歳以上の孤独死の件数は3127人。年々その数は増えている。孤独死の問題に詳しい淑徳大学総合福祉学部教授の結城康博さんは、「男性が女性の2.5倍にのぼる。独居高齢者の孤独死は今後も増えていくでしょう」と話す。

「孤独死には、突然亡くなるケースと、倒れて具合が悪くなっても助けを呼べないまま亡くなっていくケースの2通りがある。それぞれに対応が必要です」(結城さん)

 前者で重要なのは“1日でも早く発見される”こと、後者で重要なのは、何かあったときにすぐに助けに来てくれる存在。そのためには自治体などの見守りサービスの設置はもちろん、“人に気にされやすい人になっておくこと”が重要だと結城さんは話す。

「気にされやすい人になるためには、仕事でも、ボランティアでも何でもいい、外に出て縁を作ることが大事です。周りから気にされる人になれば、問題となる後者の孤独死は予防できます」(同)

 さらには、「自分が介護される側になったときのことを想定して、準備を始める“介活”を」と結城さんは呼びかける。認知症や骨折などで介護が必要になったらどう介護サービスを使うか。これもひいては孤独死対策になるという。

 好む、好まないにかかわらず訪れる一人での生活。今から“ひとり力”をつけておくに越したことはない。(本誌・山内リカ)

週刊朝日  2018年9月7日号