帰省シーズンは、子や孫を迎えに来る高齢者で駅や空港は賑わう (c)朝日新聞社
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3世代旅行・レジャーの費用負担(週刊朝日 2018年8月17-24日合併号より)
3世代旅行・レジャーの費用負担(週刊朝日 2018年8月17-24日合併号より)
生活費をまかなっている子や孫(学生を除く)の就業状況(週刊朝日 2018年8月17-24日合併号より)
生活費をまかなっている子や孫(学生を除く)の就業状況(週刊朝日 2018年8月17-24日合併号より)

「お盆玉あげるから、夏休み帰っておいで」。盆休み、こんな言葉で子や孫を誘っていたら要注意。お願いされるとついつい、子どもや孫を甘やかしていないだろうか。100歳人生時代の老後は長い。子や孫への金銭的な援助は行き過ぎると生活費が足りなくなり、「老後破産」を招きかねない。

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 とはいえ、子や孫のため、少しでも力になりたいと思うのが親心。情に流されてずるずると援助を続けてしまわないためにはどうすればいいか。まず、限度を知ることから始めよう。月々の生活費と、修繕費などの特別支出を見積もり、年金額、貯蓄額などから引いて資金がどれくらい残るか。子や孫に援助する金額は、残る貯蓄額の1~2割にとどめる。将来の介護資金や、住み替え費用など、まとまったお金がかかるタイミングに響いてきてしまう。

 子どもに安易に貯蓄額を言わないことも大事だ。親にとっては虎の子の2千万円も、子どもは「そんなにあるなら少しぐらい出してくれてもいいのに」と思うかもしれず、いざこざを生みかねない。

「貯蓄額を言うなら、月々いくら年金がもらえるかを伝えたほうが、実情が伝わりやすいでしょう」(老後資金に関するアドバイス実績も豊富なファイナンシャルプランナー、畠中雅子さん)

 畠中さんが勧める伝え方は、親が今の経済状況をメモに記して、子どもに説明すること。預金残高や生活費、年金額、年間いくら貯金を取り崩しているのかなど、細かに家計の状況を伝えるのだ。それを元に、「だからこれから先の援助は、このくらいしかできない」と線引きをすることだ。

 線引きをしたら、子どもに伝えるのは、早ければ早いほど良い。ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんは、自分の子ども(10代)に「お母さんは、自分のお金は使い切るから」と早い段階で公言している。親のお金をあてにせず、精神的にも金銭的にも自立してほしいという思いからだ。

「子や孫に使う金額や方針は、あらかじめ決めておくことが大事。でないと、親心としては、十分な老後資金がなかったとしても、見栄も働いて、ついつい出しすぎてしまう人が多い。金銭的には、時に突き放すのも親の愛だと思います」(黒田さん)

 衝撃的なのが、過度な援助を受けてきた子どもほど、将来親の面倒をみる傾向が薄いという話だ。子どもに援助しすぎると、「もらって当たり前」という依存につながり、出せなくなると「何で出してくれないの?」となる。また、親に頼りきりで親の強い面しか見てこないと、年齢とともに心身が弱ったり、衰えたりしたときに、その現実を認められないというケースが多いという。

「多くの援助を受けているほど、無意識のうちに親に依存して、親が弱っていくのを受け入れられず、介護など面倒をみない傾向にある。援助は、結果的に仇になるケースもあるということです」(畠中さん)

 子どもや孫とは別世帯という意識をもち、遠くで見守ることが良い関係を保つ秘訣かもしれない。この盆休み、気前よく出費を重ねる前に、立ち止まって考えてみてはどうだろう。(本誌・松岡かすみ)

週刊朝日  2018年8月17-24日合併号より抜粋

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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