さらに連休などに、娘家族と旅行に行くときの費用も、ほとんど佳代子さん夫婦が負担。孫が喜ぶ顔が見たくて、毎年1回、娘家族を連れて1人1泊3万円近くするディズニーホテルに宿泊するのが恒例になっている。気づけば、娘家族に対し相当な額を援助していて、夫婦2人の旅行どころではなくなっていた。

「子や孫への援助の限度を決めず、情に流されてたびたび援助を重ねていると、自分の老後破産を招きかねません」

 老後資金に関するアドバイス実績も豊富なファイナンシャルプランナー、畠中雅子さんは、こう指摘する。佳代子さんのように、子や孫に多額の援助をする親は珍しくないという。

「住宅購入時の『親の資金贈与』実態調査」(アットホーム・2014年)によれば、住宅資金の援助は、平均564万円にも上る。佳代子さんの娘のように、若い夫婦が実家の近くに住む「近居」ほど額が多い傾向にある。

 子ども家族と2世帯で旅行に行くときは、費用は全て親側が負担という例も多い。60~70代の夫婦世帯約千人を対象にした「シニア夫婦世帯の別居家族との交流に関する調査」(第一生命経済研究所・16年)によれば、3世代旅行・レジャーの費用は、8割が「親が負担した場合の方が多い」という結果。何と、家計が苦しく老後資金が心配という親であっても、うち75.8%が「親が負担した場合の方が多い」と回答している。子どもが離れた場所に住んでいる場合、盆や正月に、子ども家族が帰省するときの交通費は毎回全額負担するという親も珍しくないという。

「帰省費用と称して、交通費分のお金を渡している親御さんは少なくない。お金を渡さなくなったら、帰ってこないのではと思われているようです。これが例えば4人家族の子ども2世帯分ともなれば、8人分。一度の帰省のたびに、30万円近く出している親もいます」(畠中さん)

(本誌・松岡かすみ)

週刊朝日  2018年8月17-24日合併号より抜粋

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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