介護していた人を看取った後に、「介護ロス」に陥りやすいとも。年齢が年齢なので、その後に立ち直ることができず、高齢者の虚弱であるフレイルなどが一気に進みやすいという。

 介護者の病気の治療が遅れるという問題も出てきている。汐田総合病院(横浜市鶴見区)副院長・総合ケアセンター長の宮澤由美さんは「介護者は、自分のことを後回しにしがち。それで病気の発見が遅れることがある」と注意を促す。

 例えば、国立がん研究センターがん情報サービスによると、がんの死亡率は男女とも60代から増加。脳卒中は東京都のデータを見ると、60代から発症頻度が高まっていることがわかる。つまり介護者も病気にかかるリスクが高いのだ。

 介護者にがんが見つかるケースは、決して珍しくなく、認知症などの発見も遅れがちだ。介護者が要介護者につきっきりになったことで、介護者の配偶者の病気の発見が遅れるというケースもあった。

「介護者の方と話すと、多くが『自分が病気になったら、誰が家族をみるのか』と心配されている。ですが、実際に自身の健康に気を付けているかというと、なかなか難しいようです。私たち医療者や介護スタッフも、どうしても要介護者を中心に考えてしまう」(宮澤さん)

 では、こうした問題を解決するにはどうしたらいいか。それは介護者が、心と時間の余裕を取り戻すことに尽きる。宮澤さんはこう助言する。

「まずは、レスパイトケアやショートステイをしっかり活用しましょう」

 レスパイトとは「一時中断」「一時預かり」の意味で、介護者の負担を軽減するため、要介護者を一時的に入院させたりショートステイを利用させたりする仕組み。病気の治療や安静だけでなく、冠婚葬祭などで自宅を留守にしなければならないときにも利用できる。

 施設に入所する場合は、要介護1以上の人は介護老人保健施設に、要介護3以上の人は特別養護老人ホームに、という縛りがあるが、一時預かりのショートステイであれば、要介護度は関係なく、預けることが可能だ(実際は、入所と同じレベルの人がショートステイをしている例が多い)。酸素吸入など、医療依存度の高い要介護者であれば、在宅療養支援病院や、在宅療養後方支援病院などに入院するという方法もある。

 ショートステイによるレスパイトケアを利用する場合はケアプランが必要なので、担当するケアマネなどに相談を。一方、入院の場合はケアマネや在宅医を通じて、病院の地域連携室やメディカル・ソーシャル・ワーカーに聞いてみるといいだろう。

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