(c)朝日新聞社
(c)朝日新聞社
重症例を含む脳卒中患者数(人) (週刊朝日 2018年8月3日号より)
重症例を含む脳卒中患者数(人) (週刊朝日 2018年8月3日号より)
自助具は自分に合ったものを。押すだけで爪が切れる爪切り(c)朝日新聞社
自助具は自分に合ったものを。押すだけで爪が切れる爪切り(c)朝日新聞社
おわんを片手に固定するホルダー(c)朝日新聞社
おわんを片手に固定するホルダー(c)朝日新聞社

 長寿化が進んだ今の日本では避けて通れない老老介護。介護する側(介護者)、介護される側(要介護者)の問題と解決策について、専門家のアドバイスを紹介しよう。

【重症例を含む脳卒中患者数はこちら】

 最も大きな問題は、介護者の心と体の健康だ。高齢になるほど肉体的な介護はキツくなる。高齢者医療に詳しい、ふくろうクリニック等々力(東京都世田谷区)院長の山口潔さんは、「個人差はありますが、加齢に伴う身体機能の急激な低下は、だいたい75歳から始まる」と説明する。

 肉体的な加齢が進めば、若いときのように要介護者を移動させたり、ベッドから起こしたり、体を拭いたりといった身体介助ができなくなる。また無理をすることで骨折などのリスクにもつながる。しかも、以前のように、仮眠をとれば疲れが取れるということもなくなってくる。

 一方、精神的なダメージはもう少し早くから始まるという。

「多くの人が老いを感じ始めるのは、65歳を過ぎたあたりからです。自分の加齢を実感しつつ、同じように年をとって徐々に機能が低下していく要介護者をみていくのは、精神的につらいものです」(山口さん)

 もう一つの問題が、“もの忘れ”だ。75歳を過ぎたころから、認知症まではいかなくとも、加齢による認知機能や判断能力の低下が起こるという。

「介護をする上で一番難しいのは、介護保険制度を理解したり、ケアマネに要介護者の状態を伝えて話し合ったりといった、マネジメントの部分です。病院で医師に病状を説明するのも、高齢になるほど支障が出てきます。普段をよく知っている主治医や訪問看護師などの手助けを受けたほうがよいでしょう」(同)

 ひと昔前は介護は嫁や妻、娘など女性が担うケースが多かったが、近年は息子や夫など高齢男性が介護の担い手に。今回、取材した人たちの多くが、「定年退職後の高齢男性が親をみるようになった」と話す。

 離れて暮らす親のケアを考える会「パオッコ」を主宰する介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんによると、会に集まった遠距離介護を行う高齢男性の話を聞くと、「親に恩返しをしたい」と介護を始めるケースが多い。

「男性が介護に積極的に関わるようになったことは、喜ばしいことです。ただ、男性の場合、介護にのめり込みやすく、仕事に代わる“生きがい”となる傾向がある。うまくいっているときはいいですが、一人で抱え込みやすく、問題が生じたときにうつや介護虐待の引き金になることがあるので要注意です」(太田さん)

次のページ