放送作家でコラムニストの山田美保子氏が楽屋の流行(はや)りモノを紹介する。今回は、「そし弁」。
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先日出演させてもらった「ご参考までに。」(日本テレビ系)は、今冬にオンエア予定の脚本・バカリズム、主題歌・福山雅治という“朝ドラ”企画の事前番組だ。
第2弾の今回は、ドラマのモデルになりそうな人々がピックアップされ、本人登場のVTRをスタジオで披露。福山が代表して「ドラマ化できるか否か」をジャッジした。
そのVTR1本目に出てきたのは、博多華丸・大吉の元マネジャー、曽志崎真衣さん。よしもとクリエイティブ・エージェンシーの元社員で、“華・大”らを担当していたのだが結婚を機に退職。現在は、『そし弁』なるロケ弁・局弁屋を経営しているという。
曰く、芸人は番組が用意するロケ弁によってテンションが変わってしまう……。そのことは私も当欄で度々書いてきた。
人気のロケ弁、局弁は、だいたい決まっていて、4~5社をローテーションしている番組が多いので、売れっ子芸人ともなると、収録を終えて次の現場の楽屋に入ったら、また同じ弁当だった……ということも少なくないのである。
もちろん、人気弁当店のそれはメニューも豊富だし、見た目もキレイだし、何より美味しい。「人気弁当店の弁当を出してもらえるということは、初めてグリーン車のチケットを手配してもらえたときと同じような感動があるもの」「その有り難みを忘れてはいけない」といった芸人の会話を耳にしたこともある。そう、売れない頃のことを思えば、感謝しなければいけないと思う。
だが、現場マネジャーだった曽志崎さんは、栄養が偏ってしまったり、カロリー過多になってしまったりすることや、たまにあるハズレな弁当を前にしたときの芸人のテンションを問題視。よしもとを寿退社したのを機に、「工場や機械を一切使わない」「毎日食べても飽きない」「野菜もたくさん」「お腹いっぱいになる」など、芸人のみならず、番組スタッフにも喜ばれるような『そし弁』をオープンしたのである。
弁当は完全なる手作りで、都内のスタジオやテレビ局へのお届けがメインだが、常に8種類あって、HPには「お母さんが作った懐かしいお弁当」「料理上手の彼氏が作ったお弁当」など、若い女性ならではの説明文が載る。
ちなみに福山雅治のジャッジは、ドラマ化の可能性あり。お笑い芸人やテレビ番組の裏側+ロケ弁というのは、新たな業界ドラマになりそうだと私も思った。そして、『そし弁』が各番組の弁当ローテーションに加わる日も近そうだ。
※週刊朝日 2018年8月3日号