水不足がひどくなれば、医療現場も困る。病院や歯科医院は、手術時などに入念な手洗いをするため、水道水を特別な装置で殺菌処理して使う。水道水を十分確保できないことになれば、治療に影響が出る。

 顧客の髪を洗う際に大量の水を使う美容院や理容店、麺を茹でる際に水が不可欠なそば店やラーメン店……。取水制限が今後厳しくなれば、こうした店も気をもむことになりそうだ。

 一方で、猛暑や水不足が追い風となる商品も多い。

 気象庁が昨年まとめた調査結果によると、スポーツ飲料は平均気温約22度、ミネラルウォーターは約25度を超えると、販売数が急増するという。エアコンは7月の平均気温が平年より2度高いと、販売数が約1.5倍に。キリンビールによると、気温1度上昇でビールの販売量は2.5%増える。

 楽天は、ネット市場での商品販売と気温変化の関係を調べている。水着は最高気温が25度を超えると売れ始め、30度になるとさらによく売れる。ビニールプールは25度を超えたあたりから買おうと考える人が増え、30度超だと売れ行きがかなりよくなる。

 ハウス食品グループ本社によると、夏はカレーがよく売れる季節。猛暑だと鍋を使って調理するカレールーは敬遠されるが、レトルトカレーは好調だという。

 タクシー業界も、猛暑に期待できる。街なかを少し歩いただけで汗だくになるため、短距離の移動で使う乗客増を見込みやすい。

 猛暑になれば、日焼け止めクリームやサングラス、日傘の出番が増える。傘メーカーの東京丸惣によると、日傘の売れ行きは気温上昇とともによくなり、夏場のじりじりした暑さは買い替え需要も生むという。

 それでは、深刻な水不足となった際、よく売れるものは何だろうか。

 例えば、水洗トイレの使用に支障が出ると、非常用の簡易トイレが不可欠になる。風呂やシャワーの利用を控えることになれば、ウェットティッシュや制汗剤が注目される。調理に十分な水を使えなくなれば、レトルト食品や缶詰の売れ行きが伸びそうだ。

 西日本では、豪雨に見舞われた後に水不足に陥った。20万戸超が断水となり、被災者の生活や復旧作業に支障が出ている。大地震なども含め、大きな災害への備えには家庭での水備蓄が欠かせない。

 消防庁によると、1人が1日に必要な飲料水は3リットル。最低3日分計9リットルを家庭に備えておくことが望ましいという。飲み水以外にトイレ用水なども必要なため、風呂の残り湯をはっておくなどの習慣が、いざというときに役に立つ。

 気象庁によると、東日本の太平洋側は8月上旬までの向こう1カ月間、平均気温が高めで推移する見込み。猛暑と渇水の行方から目を離せない。(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日 2018年7月27日号