過去の水不足で水位が下がったダム。今年はこうした事態にならないことを祈りたい(c)朝日新聞社
過去の水不足で水位が下がったダム。今年はこうした事態にならないことを祈りたい(c)朝日新聞社
猛暑・水不足の泣き笑い/取材をもとに編集部作成(週刊朝日 2018年7月27日号より)
猛暑・水不足の泣き笑い/取材をもとに編集部作成(週刊朝日 2018年7月27日号より)
過去の大規模な渇水(国土交通省の資料から作成(週刊朝日 2018年7月27日号より)
過去の大規模な渇水(国土交通省の資料から作成(週刊朝日 2018年7月27日号より)

 西日本が大水害に見舞われるなか、首都圏では水不足が心配されている。大雨が降った前週の6月29日、関東甲信地方に観測史上最速の梅雨明け宣言が出された。関東の一部河川では、10%の取水制限がスタート。8月まで猛暑で日照り続きの夏となれば、渇水被害が待ち受けている。

【図】猛暑と渇水で損する業界、得する業界はこちら

 雨の被害が広がるさなかの7月10日、関東の鬼怒川では10%の取水制限が始まった。渡良瀬川でも6月29日から制限しており、国土交通省関東地方整備局は渇水対策本部を設けて警戒体制入り。関東の河川の上流域の6月の降水量は平年値の半分ほどで、貯水量も低めのダムが多い。

 10%の制限は生活用水に影響の出るレベルではない。しかし、雨が降らないままだと深刻になる。

 首都圏が大きな被害に見舞われたのは、1994年の「列島渇水」。利根川で30%の取水制限が実施され、東京都も7月末から9月半ばにかけて、最大15%の給水制限に踏み切った。首都圏の学校や公営のプールが一部閉鎖されるなど、子供たちにとって恨めしい夏休みとなった。

 今年はそんな事態に陥ることがないのだろうか。

 よみうりランド(東京都稲城市)や東京サマーランド(東京都あきる野市)など、郊外の大型プールは井戸水の利用が多く、水不足の心配はないという。東京都文京区の文京総合体育館プールは水道水だが、濾過(ろか)機を使っており、影響は軽微。プールの運営者にとっては今のところ、水不足の心配より猛暑による来場者増の期待が熱いようだ。

 レジャー施設では、動物園や植物園も水を大量に使う。パンダのシャンシャン人気で沸く東京都内の上野動物園は、水道水と井戸水を両方使っている。数年前にあった節水協力の際は、園舎のプールや池の水替えの間隔を、2日ごとから1週間に延ばしたという。

 農畜産物への影響も避けられない。かつての渇水時は、一部の水田が干上がったこともあった。家畜は暑さに弱く、乳牛は乳が出にくくなる。畜舎では扇風機で風を送って散霧したり、頭上から水のカーテンをつくって温度を下げたりしている。ここでも、水が大切な役割を果たしている。農林水産省によると、2010年の猛暑の際は乳牛約2400頭、肉牛約500頭が死ぬなどの被害が出た。

 さらに、農家の大敵は熱中症。消防庁によると、熱中症で救急搬送された人(4月30日~7月8日の速報値)は、東京819人、埼玉892人、千葉459人、神奈川469人。いずれも前年同期より多い。

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