そして、遺体や遺品の引き取りについて尋ねられたが、そこでも答えはなし。

 そこで、刑務官が妻や長女ら、家族を具体的にあげて聞いた。

「四女」

そう麻原元死刑囚は、話したという。

ハッキリ聞こえなかったので、再度、刑務官が

「四女でいいのか?」

「四女なんだな?」

と何度か確認すると、うなずいたという。

 そして、刑務官が両脇を抱えるようにして、麻原元死刑囚を刑場の前にある「前室」に連れて行く。線香がたかれ、そのにおいが充満した「前室」で拘置所の所長が麻原元死刑囚に指揮書を読み上げて、死刑執行を告げた。

「麻原元死刑囚は、暴れたり、声を発することはなかった。だが、前室で目隠しをされ、両足を固定されたときには死刑が現実のものとわかったのか、顔がやや紅潮してみえたそうです」(前出・法務省関係者)

 そして、麻原元死刑囚は刑場へと消えたという。

 この日、東京拘置所では麻原元死刑囚だけではなく、遠藤誠一元死刑囚と土谷正実元死刑囚も執行された。

「通常、死刑執行は1日に2人まで。3人というのは異例です。麻原元死刑囚の執行の間に次の準備に取り掛かかり、とても慌ただしい状態でした。土谷元死刑囚は、執行前から精神的に安定しない日々で、執行を告げられてかなり驚いていたそうです」(前出・法務省関係者)

 大阪拘置所では、井上嘉浩元死刑囚と新実智光元死刑囚の死刑が執行された。

「井上元死刑囚は死刑執行が近いと思っていたのか、独居房でもせかせかした感じでいろいろノートに書いていましたね。新実元死刑囚は大阪拘置所に移送された後、毎日、獄中結婚した妻が面会に来てくれるのを心待ちにしていた。面会室では新婚のカップルのようにみえたという。だが、新実元死刑囚は精神的には、落ち着かない日々で、ソワソワしていて、『どうなるのだろう』とこぼすこともあった。東京拘置所では、独居房で瞑想したそうだが、大阪拘置所ではそんな余裕もなかったようだ」(大阪拘置所関係者)

 井上元死刑囚は、死刑執行の直前、最後の言葉として、自分の両親に

「心配しないでと伝えてください」

「ありがとうございました」

と述べた。

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執行に立ち会った幹部は、その後