年収の水準だけでなく、どのぐらい増えているのかも気になるところだ。年収の増加を5年前と比較すると、東日本のトップはホタテ漁で潤う81%増の猿払村。

 3位の葛尾(かつらお)村や6位の大町など福島県の自治体も入る。自治体の担当者らは、原発事故に伴う東京電力からの賠償や、行政による土地の買い上げが進んだことで、住民の所得が一時的に上がっていると説明する。

 2位の遠軽(えんがる)町(北海道)や4位の二宮町(神奈川県)などは、土地や株などの資産を売却した住民がいたことも増加の要因だ。人口の少ない自治体の1人あたりの年収は、一部の資産家の影響を受けやすい。

 11位には26%増の川上村(長野県)が入った。レタスの出荷量が市町村としては日本一だ。白菜なども生産しており、15年の村全体の野菜の販売額は約200億円で、農家1戸あたりの平均収入は4千万円を超えるという。後継者不足で悩む農家が全国的に多い中、村の農業従事者には若い人も多い。村役場の担当者は「経営が安定し収入も確保できているため後継者が見つかる」と喜ぶ。(本誌・吉崎洋夫)

週刊朝日  2018年7月6日号より抜粋

著者プロフィールを見る
吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

吉崎洋夫の記事一覧はこちら