都心に行きやすい周辺の街でも人口が増えて、高所得者が流入している。ランキングに入る武蔵野市(東京都)や浦安市(千葉県)などは、会社員らに人気があるエリアだ。
高収入というと大企業の社員や公務員らを想像しがちだが、実は農林水産業に従事する人も負けてはいない。
東京周辺が上位を占める中で、意外な自治体が食い込んでいる。猿払村(さるふつむら・北海道)は813万円で3位。北海道北部のオホーツク海に面し、人口は2700人(6月時点)。
水揚げ量が市町村の中で全国一のホタテ漁のおかげだ。村には“ホタテ御殿”が立ち並び、ベンツなどの高級車が走る。村の漁業関係者はこう明かす。
「海が荒れて水揚げが全国的に少なくなると、1キロあたりの単価が跳ね上がる。猿払村は水揚げが安定しているので単価が上がると、年収が1千万円を超える人は珍しくない。3千万円を超える人もいる」
移住したいと思う人もいるだろうが、ホタテ漁ができるのは漁業協同組合員に限られるという。
「新たに参加できるのは、いま従事している親の息子、もしくは、娘と結婚した娘婿に限られる。後継者は2人まで。これは乱獲を防ぐためです」(漁業関係者)
大企業の恩恵を受けているところもある。13位は忍野(おしの)村(山梨県)の484万円。富士山のふもとにある自然豊かな村で、人口は9700人(5月時点)。
村役場総務課の担当者は、「住民の平均年収が高いのはファナックがあるためです」と説明する。産業用ロボットなどを製造する世界的な企業だ。一般消費者向けの製品は扱わないため知名度は低いが、企業の市場価値を示す時価総額は6月21日時点で約4.6兆円。日産自動車や日立製作所などを上回り、超優良企業として知られる。
有価証券報告書によると、17年3月期の社員(平均年齢42.2歳)の平均給与は1318万円。12年と比較すると240万円増えた。
「村には2千人弱の従業員や役員が住んでいます。家族を含めれば村民の3割くらいが関係者。太陽光発電などを備えた高機能な家に住んでいる人が多いですね」(村役場総務課の担当者)