

2017年6月22日に小林麻央さんが亡くなってから1年が経つ。幼い子どもたちや大切な家族、そして私たちにも多くのメッセージを残して旅立ったことは、いまもなお心に深く刻まれている。日本尊厳死協会副理事長で『「平穏死」10の条件』(ブックマン社)の著者、長尾和宏医師は今年1月、監修した週刊朝日ムック『さいごまで自宅で診てくれるいいお医者さん』(朝日新聞出版)の出版記念講演会で、小林麻央さんが自宅で平穏死を迎えた意義について語っていた。最期を自宅で迎えることとは――。講演の一部をお届けする。
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麻央さんは若い芸能人には珍しく在宅での平穏死でした。最期の場に在宅を選び、その自己決定を家族は最期まで支えました。麻央さんは亡くなる瞬間に海老蔵さんに「愛してると言って旅立った」といいます。会見で海老蔵さんが言ってましたね。
しかし、この発言に対してある医療系サイトでは「そんなことあるわけない」という趣旨の発言が相次ぎました。ですが、私は事実だと思います。
麻央さんと同様に小さな子どもがいる30代の乳がん女性を看取った経験が2例ありますが、死の直前まで訪問看護師や私と話していたので、(麻央さんについても)私は事実であると思います。
亡くなる前日まで食べたり、直前まで会話ができることを知らない医師は、「平穏死」を見たことがないのかなと思います。要するにほとんどのお医者さんが平穏死を見たことがないのだと思います。
彼女は自宅でまさに平穏死したんですね。だから、最期までしゃべっている。コミュニケーションしているんです。そして、最期まで食べていました。
亡くなる直前の6月20日のブログには、
「ここ数日、絞ったオレンジジュースを毎朝飲んでいます。今、口内炎の痛さより、オレンジの甘酸っぱさが勝る最高な美味しさ!朝から 笑顔になれます。皆様にも、今日 笑顔になれることがありますように」
と。これが、最後のメッセージになりました。在宅療養、そして平穏死では最期まで何かしら食べていることを広く知らしめてくれました。