「この方はどうして芸人をやっているのかなと。最初からこっち(漫画界)に来ればよかった。それくらい素晴らしい。読んだ人は心が癒やされる、温かい飲み物のような作品です」

 矢部さんは漫画への思いをこう語った。

「中学校の図書室で(手塚治虫の作品の)『火の鳥』を読んでいた時とかは、いまここに立つことになるとは思ってもいなかった。芸人を始めて、けっこう人生の『斜陽』を感じていたんですけど、そんな僕がこうしてここにいる。お笑い芸人が僕の本業なんですけど、人前でしゃべるのが苦手で、うまく言葉にできない気持ちを少しでも漫画で描けたらいいなと思っています」

 里中さんは矢部さんはいつか「大家さん」ではなく、漫画家の「大家」(たいか)になって欲しいとエールを送る。

「謙虚に、細く長くやっていきたい」という矢部さん。漫画家としてのデビューは38歳で遅い方だが、将来は本当に大家になるかもしれない。(本誌・岩下明日香、多田敏男)

※週刊朝日オンライン限定記事