■世界遺産より希少なGSSP


地球史の地質時代の区分けは、最も細分化した場合、115に分けられる。そのうちの一つ、更新世中期の名前がまだ決まっていなかったが、地質時代の国際標準模式地(GSSP)として千葉セクションが認められれば、チバニアン(千葉時代)と命名されることになりそうだ。GSSPは現在、世界に66カ所しかなく、世界に1000程度ある世界遺産と比較してもその希少さがわかる。最終決定は2020年ごろと考えられるが、GSSPに決まると、その地に「ゴールデン・スパイク」という杭が打ち込まれる。ちなみにチバニアンの前の時代は、イタリア・カラブリア州の地中海沿岸のヴリカがGSSPとして認められたことでカラブリアンと命名された

■貝化石
養老川流域にみられる地層は、かつて海底に堆積したものが地殻変動によって隆起し地上に現れたもので、その証拠が、現在の川底に見られる。中心に見える白い逆Cの字状の物質が貝殻の化石と考えられ、この周囲では川の水流ごしに生痕化石が確認できる

■生痕化石(ユムシ)
かつての海底に生息していた生物がのこした痕跡が生痕化石である。この写真では2種類の生痕化石が確認できる。やや黒っぽいものと、その左のやや白い楕円状のものである。いずれもユムシと思われる細い円筒状の生物が行動した痕跡と考えられる

■チバニアンへの行き方
チバニアンは千葉県市原市田淵にあり、鉄道で行く場合は小湊鉄道月崎駅で下車し、徒歩約30分(2キロ)である。車の場合は県道81号線を千葉市方面から南下し、「田淵会館」の看板を右折すると田淵会館の約150メートル先に仮設駐車場がある。そこからは案内板の指示に従って行くと、チバニアンの地層が観察できる場所に着く。チバニアンに続く道や観察地は、狭く歩きにくい場所もあるので、人が多い場合は譲りあっての見学を。

■チバニアン見学のポイント
1.観察地は養老川がすぐ横を流れている。川岸付近の濡れて滑りやすい地面を歩くので、靴底がしっかりした靴や長靴を着用のこと。また、雨天時や雨があがった後は川が増水しているので、とくに注意が必要。

2.地磁気逆転地層に限らず、周囲の地層は非常に貴重な資料なので、地層を削ったり、土を採取したりすることは絶対にしてはならない。

3.水量が少なく水が澄んでいる場合は、川底を観察すると貝化石や生痕化石を見つけることができるかもしれない。

(取材・文/本誌・鮎川哲也)

週刊朝日 2018年6月1日号