チバニアンの地層(撮影/写真部・加藤夏子)
チバニアンの地層(撮影/写真部・加藤夏子)

 46億年の地球の歴史には、カラブリアンやオックスフォーディアンなど、それぞれ地球の大きな変化の時代を特徴づける地域に由来する名前がついている期間がある。約77万~12万6千年前の時代は、千葉県市原市の養老川岸にある地磁気逆転地層から、「チバニアン(千葉時代)」と命名される見通しだ。

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チバニアンと地磁気逆転について、茨城大学教授でチバニアン研究チーム代表の岡田誠氏の監修と、生痕化石に詳しい千葉大学特任助教の泉賢太郎氏の編集協力のもと、解説する。

■チバニアンの地層はこんな構造だ
横に伸びる一本の筋は、白尾層と言われる火山灰が堆積した層。約77万年前の御嶽山の噴火によるもので、これより下がより古い時期の地層、上がより新しい時期の地層となる。この地層中には磁気を帯びている磁鉄鉱が含まれており、採取しその磁気を測定すると、下方が現在と反対の逆磁極期(コンパスのS極が北を示す)の地層、上方は現在と同じ正磁極期の地層であることがわかった。その間に170センチほど、遷移帯と呼ばれる地磁気が移り変わる時期の地層があることも判明した。地磁気逆転の証拠を示す地層で、かつ、白尾層によって形成時期もわかるという、非常にまれなケースである

■地球磁場逆転の歴史
地球の地磁気の向きが南北逆になる地磁気逆転は、地球誕生後46億年の間に数多く起きている。磁石のNは北を、Sは南を示すのが現代の常識だが、過去にはNとSが逆を示す時代が何度もあったということだ。過去約360万年の間に、11回ほどの磁場逆転があったとされているが、なぜ磁場が逆転するかはまだ解明されていない。最後の逆転は77万年前で、その現象を見ることができるのがチバニアンだ。

■地球磁場逆転が発見された玄武洞
兵庫県豊岡市にある玄武洞公園の一部で、約160万年前の噴火によりできた玄武岩の溶岩層を、江戸時代の人が採掘し洞窟となった。マグマが冷えて固まってできたダイナミックな六角形の柱状節理が美しい。1926年、京都帝国大学教授の松山基範が、ここの玄武岩が現在の磁場と逆の磁性を持っていることを発見。地球の磁場が逆転することを世界ではじめて唱えた。当時はまったく相手にされなかったが、古地磁気学が発展し、松山の主張が認められるようになった。玄武洞は、人類の時代である第四紀においてはじめて地球磁場逆転が発見された重要な地である

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