■家族の味を初めて知った映画

――母の吉行あぐりは戦前から美容師として活躍し、NHK連続テレビ小説「あぐり」(97年)のモデルにもなった。兄は、女性関係が話題になることも多かった人気作家の吉行淳之介。父の吉行エイスケも、妹の吉行理恵も作家。ちょっと変わった家族に囲まれて育ち、家庭の味というものは、女優の仕事を通して知った。

 お誕生日を祝ってもらうとか、お正月にお節やお雑煮をみんなで食べるとか、そういうことがまったくありませんでした。みんながそれぞれ好きなことをしてる感じで。自分では普通だと思っていましたけど、ちょっと変わった家族ですよね。

 映画「家族はつらいよ」シリーズは、「妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII」(25日公開)で3作目。その前の「東京家族」(2013年公開)も入れると4作、ずっと同じメンバーでやっているので、家族の疑似体験をしているみたいです。家族の味というものを、初めて感じることができました。ありがたいですね。

 私が演じている富子は、貞淑な妻と思わせておいて、じつは、自分で人生を切り開いていくタイプ。1作目では夫に離婚届をいきなり突き付けたし、今回は夫に「同じお墓に入りたくない」って言っちゃってます。

 山田洋次監督は、役者のことを本当によく見てらっしゃいます。きっと私の性格や本質を見抜いたんでしょうね。バレたか、という感じ。もし今、自分に夫がいたら、富子と同じように「同じお墓に入りたくない」と言っていると思います。

――自身は28歳のときに一度結婚したが、4年ほどで離婚。それ以降は、独身を通してきた。

 結婚していたころは、まだ若かったし、相手に対して「なんでわかってくれないの」っていう思いが強かった。私が何でも自分で決めちゃうから、どうして相談しないのって驚かれたこともあったけど、そもそも自分のことを誰かに相談するっていう発想がなかったんです。

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